不登校・ひきこもりと発達障害⑩〔ASDへの対応について〕
管理者用
自閉症スペクトラム障害(ASD)への対応の仕方について
前回のブログでも指摘しましたし、これまでも繰り返し述べてきたことですが、自閉症スペクトラム障害(ASD)への対応の仕方を誤ると、二次障害を併発して不登校・ひきこもりに発展し、常態化していくリスクが増大していくことになりかねません。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の生徒は、「臨機応変」「以心伝心」「暗黙の了解」「本音と建前」など、現実の学校生活の中で応用して理解していくことに困難を生じます。特に思春期以降、中学・高校生になってくると、学校での人間関係、対人交流が活発になってきますし、複雑化していくことになるわけですが、その環境の変化に適応していかねばならなくなります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性の一つとして「限局され反復する行動や興味」「変化に対する過度の抵抗」がというものがあります。この特性のため、ASDの生徒は、環境の変化に強いストレスを感じます。中学・高校に入り、対人交流が盛んになるにしたがって、ASD特有の「感覚過敏」の症状が顕在化、悪化していくこともあります。変化に富んだうえに視覚情報・聴覚情報が過多になる環境においては、ASDの生徒にとってきわめて不快に感じられてしまうことが珍しくはありません。
ASDの生徒への対応の際に留意すべきことは、ASDの認知行動特性を踏まえた上でなされる必要があると言えます。ASDの認知行動特性としては、上記の「限局され反復する行動や興味(こだわり行動)」という特性のほかに、「社会的なやり取り(対人性)の障害」「コミュニケーションの障害」という特性があります。
これら三つの特性は、「ASDの三つ組みの特性」とも言われますが、この三つ組みの特性を踏まえた上で、それぞれの特性に応じた対応の仕方を簡単にまとめてみたいと思います。
《参考文献》
・『自閉症スペクトラムがよくわかる本』(講談社:本田秀夫 監修)
・『自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の本』(主婦の友社:宮本信也 監修)
・『自閉症スペクトラム辞典』(教育出版:日本自閉症スペクトラム学会 編)
「こだわり行動」を踏まえた対応
まず言うまでもないことですが、自閉症スペクトラム障害の生徒に独特の「こだわり」があることを理解していただくことが前提となります。
①こだわりが強くなる際には、その背景に大きな心理的社会的なストレスがあったり、あるいは感覚情報(視覚・聴覚情報など)が飽和状態に達している可能性がありますので、「こだわり行動」そのものではなく、その背景を常に考えるようにしてください。
②①にも関連しますが、ASDの場合、感覚過敏があることに注視してください。特に視覚情報に過敏なることが多いようですが、嗅覚、皮膚などにも独特の過敏さを持っていることがあります。香水の匂いに敏感だったり、背中を軽く触られただけで叩かれたような衝撃を受けることもあるので、注意が必要です。
③嫌いな物事を強制しないようにしてください。過度の恐怖感を抱き、パニックを起こすこともあります。逆に、好きなことや熱中していることを、何の断りもなく突然、中断することもできるだけ避けるようにしてください。
④予定の変更、部屋の変更などについては、できるだけ事前に伝えるようにしてください。「変化に対する過度の抵抗」という特性があることを理解してください。
《参考文献》
・『親子で乗り越える発達障害』(河出書房新社:塩川宏郷 監修)
・『小児科臨床ピクシス② 改訂2版 発達障害の理解と対応』(中山書店:平岩幹男 専門監修)
「社会的なやり取り(対人性)の障害」を踏まえた対応
①教えるときは、言葉だけでなく視覚的なヒントを与えてあげるよう工夫してください。
②同年代の子どもたちの近くにいると、脅威を感じることがあるので十分に注意してください。同年代の子どもたちとグループ行動をするのが苦手な場合があります。ひとりでいること、過ごす時間を認めてあげることは大切なことです。
③雑然とした休み時間は苦痛に感じることがあります。適応指導教室や民間のフリースクールのような不登校の子どもの中に居場所を提供している機関では、参加の仕方や過ごし方が分かりにくく、逆に行きづらくなるということもあります。
《参考文献》
・『子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本』(日本実業出版社:西永堅 著)
・『発達障害が引き起こす不登校へのケアとサポート』(学研:齊藤万比古 編著)
「コミュニケーションの障害」を踏まえた対応
①相手の表情や仕草から気持を読み取るのが苦手なので、表情や動作は単純明快にしてください。
②言葉を表面的・字義通りにしか理解しない認知特性があるため、言葉に含みを持たせるのではなく簡潔にし、一度に一つの指示を与えるようにしてください。
③相手の問いを理解し、応答するまでに時間がかかることがあります。したがって、応答する時間は十分に取ってあげて、急かしたり即答を求めたりしないでください。
④③に関連しますが、コミュニケーションを持ちたいと思う状況を作ってあげることは重要です。そしてコミュニケーションを図ろうとする気持ちを汲み取ってあげることが大切です。
ASDの生徒は、一度に複数の情報を処理できにくいので、次々に指示を出されてると、何を言われたのか理解できないことがあります。この結果、ASDの生徒は周囲の生徒たちの動きを見てから行動するようになり、このため他の生徒たちよりワンテンポ以上、動作・行動が遅れてしまうことが珍しくありません。
中学・高校に進むにつれて、何教科もの宿題が並行して出されることになりますし、小学校にはなかった定期試験でも多くの科目が出題されるようになります。ASDの生徒の場合、一度に複数の作業をやりこなすことが非常に苦手であるため、どこから手をつけていいか分からなくなり、最悪の場合、丸投げしてしてしまうこともあります。
《参考文献》
・『図解 よくわかる思春期の発達障害』(ナツメ社:中山和彦/小野和哉 著)
・『発達障害のある子どもができるこを伸ばす!思春期編』(日東書院:杉山登志郎/辻井正次 監修)
ASDの児童生徒における学業不振、急激な学力の低下
中学に入学後、あるいは高校に進学後に、ASDのこうした認知特性が顕在化した場合、学力低下が著しい状態になり、極度の勉強嫌いになっていく危険性も高くなってくると言えます。
一度にたくさんのことを指示されると、混乱して自分で優先順位をつけることができなくなり、何をすればいいか分からなくなるため、結局何も手をつけないまま、定期試験を受けることになってしまうわけです。
中学はこれでも進級・卒業できるわけですが、高校では進級・卒業単位が取得できずに留年・中退の危機にも晒されることになります。
こうした状況に直面して保護者の方で焦って、塾のスケジュールををぎゅうぎゅうに詰め込んだり、塾や家庭教師の掛け持ちをさせたりするのは、ASDの生徒への対応の場合、むしろ逆効果にしかならないと言えます。こうしたASDへの無理解により、不登校・ひきこもりを引き起こしかねないことに、十分にお気をつけいただきたいと思います。
あれもこれもに手をつけさせるのではなく、あくまで「選択と集中」のスタンスで臨むことが求められてくるのです。
《参考文献》
・『発達障害がある子どもを育てる本 中学生編』(講談社:月森久江 監修)
・『発達障害がある子どもの進路選択ハンドブック』(講談社:月森久江 監修)
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