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不登校
2016/11/24

うつ病と不登校・ひきこもり⑧(うつ病と不安障害について)

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不登校支援ブログ

うつ病と併存しやすい不安障害

前回のブログでは、うつ病と併存しやすい病気として適応障害を取り上げましたが、今回は不安障害について取り上げたいと思います。病的な不安・恐怖を主症状とした病気を「不安障害」と言います。

うつ病の子どもの多くに、不安障害も見られ、実に3~7割にも達すると言われています。不安障害では、普通なら何でもなく、すんなりと対応できるような状況や対象に対して強い不安や恐怖を感じ、日常生活、学校生活に支障を来たすようになります。

不安障害と言った場合、全般性不安障害や社会(社交)不安障害、そしてパニック障害などを含みます。社会(社交)不安障害では、人前で強い不安を感じます。そしてパニック障害では、突然強い不安を感じて発作を起こすことがあります。不安障害の中でも、6割ほどがうつ病と併存していると考えられています。

不安と抑うつは併存していることが多く、うつ病の人の9割が不安を感じていると言われています。不安は抑うつを呼び、抑うつは不安を強化します。子ども自身がさまざまな経験を通して自信を持つことで、こうした不安は解消し、抑うつ症状の解消に繋がることもあります。

【参考文献】

・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)

・『図解 やさしくわかる うつ病の症状と治療』(野村総一郎 監修,ナツメ社)

◆不登校支援ブログ:不登校・ひきこもりと不安障害について①~⑦まとめ

DSM-5における精神疾患としての不安障害

米国精神医学会(APA)が作成する「精神疾患の分類と診断の手引(DSM)」は、世界保健機関(WHO)が作成する「国際疾病分類(ICD)」と並び、国際的に臨床や研究に多大な影響力を持っています。2013年5月には、このDSMの第五版(DSM-5)が発表されて、不安障害に関してもさまざまな変更がなされています。

DSM-5では、不安障害の疾病概念がシンプルに整理され、かつて不安障害に含まれるとされていた「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」や「急性ストレス障害」、そして「強迫性障害」が削除され、別の精神疾患として分類されています。

DSM-Ⅳでは広場恐怖はパニック障害の下位分類にされていましたが、DSM-5ではパニック障害と広場恐怖は独立した精神疾患とされています。

そしてDSM-5で、不安障害の一種として新たに追加された精神疾患は、「分離不安障害」と「選択性緘黙」であり、これらは幼児期からから児童期に多く見られるもので、思春期以降の不登校・ひきこもりの要因とも考えられるものです。

また、かつては18歳以上の人にしか診断できなかった「社会不安障害(対人恐怖症)」、「広場恐怖」、「特定の恐怖」についても、18歳以下の人に診断することが可能になりました。この中でも「社会不安障害」については、思春期以降の不登校・ひきこもりの要因となりやすいものだと考えられます。

【参考文献】

・『学校関係者のためのDSM-5』(高橋祥友 監訳,医学書院)

・『社交不安症UPDATE エスシタロプラムによるアプローチを中心に』(小山司 編,先端医学社)

◆不登校支援ブログ:不登校・ひきこもりと不安障害①~⑦

社会不安障害と不登校・ひきこもり

DSM-5における「社会不安障害」の診断基準で、重要と思われるものを1つだけ挙げておきます。

A.他の人からの詮索の対象となりそうな社会生活場面で起こる顕著な恐怖・不安で、そのような場面が1つあるいはそれ以上ある。例として、対人交流場面(会話・あまり親しくない人との雑談)、人目を引く場面、人前での行動場面(他人の前での板書・発言・飲食など)。 

このAには、「子どもの場合は、常に不安は同世代の仲間といるときに起こり、大人の中では起こらない」という文言が付け加えられています。

子どもの「社会不安障害」は、同世代・同学年の生徒の中での人間関係の中で恐怖や不安として現れ、こうした恐怖・不安が抑うつ症状を引き起こし、やがて悪循環に陥って、不登校・ひきこもりへと発展していくものと考えられます。

【参考文献】

・『図解 やさしくわかる 社会不安障害』(山田和夫 監修,ナツメ社)

・『うつ病のことが正しくわかる本』(野村総一郎 監修,西東社)

◆不登校支援ブログ:不登校・ひきこもりと不安障害①~⑦

うつ病とパニック障害の併存は6割に達します

不安障害の中でも、うつ病との併存の割合が最も高いとされるのが「パニック障害」で、その割合は6割に達しています。

パニック障害は、急性の強い不安発作(パニック発作)が特徴で、何の前触れもなく突然起こります。電車などの乗り物の中、人ごみの中だけでなく、1人でリラックスしているときでさえ起きることがあり、場所や状況は問わず起きます。

激しい動悸や息苦しさ、胸苦しさ、震え、めまい、しびれ、吐き気などのさまざまな症状が一気に出てきます。パニック発作は1回の発作は、長くても数十分程度でおさまり、身体的な病気ではないため、検査をしても身体的な異常は見つかりません。しかしこのパニック発作が起きると、「このまま死んでしまうのではないか」と思うほどの強烈な不安と恐怖に襲われます。

そして発作がおさまっても、「また発作が起きるのではないか」という強い不安に襲われ、こうした不安を「予期不安」と言います。こうした予期不安がきっかけになって、「状況準備性発作」が引き起こされ再び「パニック発作」が繰り返されることになります。

【参考文献】

・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)

・『図解 やさしくわかる うつ病の症状と治療』(野村総一郎 監修,ナツメ社)

◆不登校支援ブログ:不登校・ひきこもりと不安障害①~⑦

パニック発作と予期不安の悪循環から抑うつ状態へ

このようにパニック発作を繰り返すようになると、発作に襲われた場所や、発作が起きたときに逃げられない場所を避けるようになり、このような行動を「恐怖症性回避」と言います。このように恐怖や不安を感じる場所を避けるようになると、当然、外出や通学ができなくなり、日常生活にも支障を来たすことになります。

この恐怖症性回避がひどくなると、また発作が起きるのではないかと不安が増幅し、気分が落ち込んで抑うつ症状を呈するようになります。パニック障害は、発作と不安の悪循環にはまってしまうと、うつ病を併発してしまう危険性も高くなってくるのです。

パニック障害とうつ病の併存率は高いだけでなく、症状も重くなりやすいので、早い時期に正確な診断のもとで適切な治療を受けることがとても大切です。 

【参考文献】

・『くらしの中の心理臨床4 不安』(青木紀久代/野村俊明 編,福村書店)

・『正しく知る 不安障害』(水島広子 著,技術評論社)

・『不安障害の認知行動療法(1)パニック障害と広場恐怖 患者さん向けマニュアル』(G.アンドリュース 他著,星和書店)

◆不登校支援ブログ:不登校・ひきこもりと不安障害①~⑦

◆不登校支援ブログ:うつ病と不登校・ひきこもり①~⑮

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