うつ病と不登校・ひきこもり⑦(うつ病と適応障害について)
管理者用
うつ病と併存する病気について
前回・前々回のブログでは、うつ病と間違われやすい病気として、統合失調症と境界性パーソナリティ障害を取り上げました。
今回は、うつ病と併存しやすい病気について取り上げたいと思います。うつ病の人の約4分の3に、併存症があるとも言われており、うつ病以外の症状も現れている場合は、他の病気が併存している可能性が高いと言えます。
不安障害の一種とされるパニック障害では約6割がうつ病と併存しているとされ、環境の変化に対応できない適応障害は、悪化するとうつ病に移行する危険性があると言われています。パニック障害や適応障害のほか、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、強迫性障害、そしてパニック障害以外の不安障害も、うつ病と合併しやすいと言われています。
うつ病と「不安」は密接な関係にあり、「抑うつ」と「不安」を併せ持つ子どもは非常に多く、「抑うつ」が先で「不安」が先なのか、その前後関係が明確に分からないことも珍しくはありません。
このような併存の可能性が認められるケースでは、併存している病気の治療も行わなければ、症状の改善は見込めません。
今回のブログでは、うつ病と併存しやすいものとして、特に適応障害を取り上げてみたいと思います。五月病などは、適応障害の症状として指摘されることもあり、こうした五月病(最近は六月病というのも増えてきているようです)が、その後、不登校やひきこもりに発展していく可能性も大きいため、軽視せず十分な注意が必要です。
【参考文献】
・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)
・『うつ病のことが正しくわかる本』(野村総一郎 監修,西東社)
適応障害はうつ病に移行することがあります
中学・高校生の場合、受験や進学、クラス替えや転校、両親の離婚・再婚など、大きな環境の変化を伴うライフイベントがあった場合、こうした環境の変化が大きなストレス因子(ストレッサー)となることがあります。しかし多くの場合、最初はストレスを感じたり緊張したりしながらも、次第に新たな環境に適応していきます。
ところが、中には「新しい環境に早く慣れなければならない」と頭では理解していながらも、感情的には「ここから逃げ出してしまいたい、どうしても馴染む気になれない」と、相反する状態に陥ってしまうことがあります。
こうした相反感情に陥ってしまうと、抑うつ症状や不安感が現れます。明確なストレスの原因から3ヶ月以内に、症状が現れ、日常生活・学校生活に支障を来たす場合に、適応障害と診断されることになります。
一般に、五月病や六月病というのは、新学期開始から1ヶ月~2ヶ月程度の日の比較的浅い期間での、新しい環境変化への適応障害の一種であると考えられます。
適応障害になりやすい子どもの特徴としては、几帳面で真面目、そしてストレスへの適応能力、耐性が弱いということが挙げられ、うつ病になりやすいとされる「メランコリー親和型」の性格特性と重なる部分もあると言えます。
【参考文献】
・『適応障害のことがよくわかる本』(貝谷久宣 監修,講談社)
・『子どもの心の診療シリーズ 子どもの心の処方箋ガイド』(齊藤万比古 総編集,中山書店)
適応障害から不登校・ひきこもりに陥ることも
中学や高校に入学後に、多くのストレスに晒されしまうと、本人にも周囲にも直接のストレス因子がすぐには分からなくなることもあります。
適応障害に男女差はなく、年齢層は比較的若年層に多いとされ、全体的な有病率は9.9パーセントで、ほぼ10人の1人の割合です。このため、さまざまなストレス因子によって、中学・高校生の時期に適応障害を引き起こすことは決して珍しいことありません。
適応障害になっている生徒の場合、表面上は変わらないこともあり、落ち着いて適応しているように見えることもあります。このため中学・高校に進学・入学後、勉学に身が入らず、おそろかになったりしていると、教師や親からは「怠けている」「サボっている」と誤解されることも少なくありません。
しかし、適応障害を引き起こしている生徒の場合、表面上は普通の状態に見えても、内心は非常に苦しんでいるのです。不安感や悲哀感、空虚感に苛まれ、とても苦しい状態に陥っているのです。
症状が悪化すると、自宅や自室に閉じこもって、外界の人たちとの接触を嫌がるようになります。不登校の症状を呈するようになるわけですが、その一方で、それまでの性格とは違って無謀で攻撃的になり、家庭内暴力に発展することもあります。
そして不登校が続く中で、抑うつ症状を呈するようになり、気分が落ち込んで絶望的になり、何もなる気がしなくなり、集中力や判断力も急激に低下していきます。
【参考文献】
・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)
・『図解 やさしくわかる うつ病の症状と治療』(野村総一郎 監修,ナツメ社)
適応障害はPTSD、急性ストレス障害とは異なります
適応障害は、誰にでも起こりえる出来事がストレス因子となりますが、大災害や事故、犯罪被害、虐待、体罰、いじめ、などの後に不安感やフラッシュバック、不眠などが起こることがあります。
これらは「急性ストレス反応」と言い、この症状が1ヶ月以上継続した場合、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になります。こうした急性ストレス障害やPTSDと、適応障害は異なります。
また適応障害は、原因がはっきりしていて、ストレス要因への反応として出るので、取り除けるものはそれを除去することが重要です。本人の気持を聞いたうえで、ストレスの原因を特定し、本人にそれを自覚させて解消させるように手助けていきます。
適応障害には確立された治療法はありませんが、うつ病の治療と同様に、休息を取る、薬物療法、精神療法などで改善します。適応障害の症状である抑うつや不安は、うつ病に移行する危険性がありますので、早めに医療機関などを受診することが大切です。
【参考文献】
・『学校関係者のためのDSM-5』(高橋祥友 監訳,医学書院)
・『臨床児童青年 精神医学 ハンドブック』(本城秀治/野邑健二/岡田俊 編,西村書店)
◆不登校支援ブログ:うつ病と不登校・ひきこもり①~⑮(にしおぎブログ一覧)
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