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不登校
2016/11/28

うつ病と不登校・ひきこもり⑨(「体の病気」としてのうつ病について)

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不登校支援ブログ

うつ病の「体の病気」としての側面について

うつ病の発症原因は、まだ完全には解明されていませんが、決して「気持ち」だけの問題でうつ病が生じているわけではありません。

うつ病は「心の病気」と言われることがありますが、脳の機能が正常に働かなくなり、脳内で何らかのトラブルが起きているという意味では、「体の病気」であるとも言えるものです。うつ病の「体の病気」としての側面を知っておくことは重要なことです。

うつ病を発症する際に脳に何らかの変調を来たしていることが分かってきています。その変調を取り除くことで、症状が改善します。

うつ病の発症原因として現在想定されている脳内のメカニズムとして、脳内の神経伝達物質(モノアミン)の変化、脳由来の神経栄養因子(BDNF)の減少の二つが有名です。前者は「モノアミン仮説」と呼ばれ、後者は「BDNF仮説」と呼ばれています。

【参考文献】

・『うつ病か、双極性か』(角尾彰信 著,丸善プラネット)

・『うつ病の脳科学』(加藤忠史 著,幻冬舎)

・『うつ病の事典』(樋口輝彦/野村総一郎/加藤忠史 編著,日本評論社)

【にしおぎ学院:不登校支援ブログ】うつ病と不登校・ひきこもり①~⑮

うつ病発症と「モノアミン仮説」

うつ病の発症に関しては、1950年代に提唱され始めた「モノアミン仮説」という仮説があります。古くからの仮説ですが、現在の精神医学においても、うつ病発症要因の重要な仮説の一つです。

人間の脳内には120~150億個の神経細胞があり、その神経細胞のわずかな隙間(シナプス間隙)で神経伝達物質を受け渡しています。このようにシナプス間でのさまざまな神経伝達物質のやり取りによって、心身を適切にコントロールするための情報伝達が行われています。

その神経伝達物質のうち、「モノアミン」と総称されるノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンが、何らかの原因でうまやりとりされなくなると、うつ病になる可能性が出てくると言われています。

【参考文献】

・『図解 やさしくわかる うつ病の症状と治療』(野村総一郎 監修,ナツメ社)

・『「うつ」の構造』(神庭重信/内海健 編,弘文堂)

◆不登校支援ブログ:うつ病と不登校・ひきこもり①~⑮

感情をコントロールする物質(モノアミン)のバランスが崩れる

ノルアドレナリンは、意欲的にしたり、集中力を高めさせたりする働きがあり、セロトニンは、感情を安定させたり、睡眠をよくしたりする働きがあります。ドーパミンには、運動させたり、快楽を感じさせる働きがあります。脳では、役割の異なる主にこの3つの神経伝達物質(モノアミン)がバランスよく作用することで、感情をコントロールしているのです。

特に、不安、恐怖などに関係するノルアドレナリンと、睡眠、食欲などに関係するセロトニンの不足や働きの低下による影響は大きいと考えられています。うつ病の治療には、モノアミンを増やす効果がある薬が有効なことから、うつ病はモノアミンが減少することで発症すると言うのが、この「モノアミン仮説」です。

うつ病における薬物療法は、この「モノアミン仮説」を背景として行われていますが、近年はよほど重症でない限り、子どものうつ病への薬物療法はなるべく避けた方がいいとの見方が増えてきています。効果が不明確な上に、副作用が出る可能性が大きいというのがその主な理由です。

「モノアミン仮説」だけでは説明できないこともいろいろあるため、神経伝達物質を受ける受容体の異常が原因だとする「受容体仮説」や、脳の神経細胞そのものに問題があるとする「神経細胞仮説」などさまざまな説があります。

【参考文献】

・『よくわかる最新医学 新版 うつ病』(関谷透 著,主婦の友社)

・『「うつ」の構造』(神庭重信/内海健 編,弘文堂)

◆不登校支援ブログ:うつ病と不登校・ひきこもり①~⑮

うつ病発症と「BDNF仮説」

うつ病の人は、新しい脳の神経細胞を作る物質が減っていると言われています。

脳の神経細胞の発達には、BDNFという神経栄養因子が関わっていると言われており、うつ病の人にはこのBDNFが少なく、神経細胞を作り出す遺伝子がほぼ機能していないということが報告されています。

脳の奥深くには、記憶や感情を司る「海馬」というタツノオトシゴのような形をした部位がありますが、うつ病の人では、この海馬が萎縮しており、神経細胞が減少していることが分かっています。

これまで脳細胞は、新しく生まれ変わることはないとされていましたが、少なくともこの海馬の神経細胞は、生まれ変わっていることが分かっています。つまり、皮膚細胞をはじめとした他の細胞のように、海馬の神経細胞は日々新陳代謝をしているのです。

健康な脳の神経細胞は、3つのタンパク質をバランスよく分泌することで、細胞の新陳代謝を行っています。うつ病の人の場合は、細胞の新生に関わるBDNFというタンパク質が著しく減少していることが分かっています。

このため、うつ病の発症にはBDNFというタンパク質の減少が関係しているのではないかと考えられるようになったのです。

この「BDNF仮説」は現在最も注目されている仮説であると言われています。

【参考文献】

・『うつ病のことが正しくわかる本』(野村総一郎 監修,西東社)

・『うつ病の事典』(樋口輝彦/野村総一郎/加藤忠史 編著,日本評論社)

◆不登校支援ブログ:うつ病と不登校・ひきこもり①~⑮

神経細胞を作るBDNFの分泌を促進する「抗うつ薬」

これまで述べてきましたように、うつ病の人の特徴として、①セロトニンやノルアドレナリンの分泌量が減少する、②神経栄養因子であるBDNFというタンパク質の分泌量が減少する、という2点が挙げられます。

このため、BDNF仮説を前提とした治療では、抗うつ薬によってセロトニンやノルアドレナリンの量を増加させることで、神経細胞の新生を促すタンパク質であるBDNFの分泌を増やすことができると考えられています。

セロトニンやノルアドレナリンが神経細胞の核に働きかけることで、細胞の核から、BDNF、グルタミン酸、CRHという3種類のタンパク質ができることが分かっており、BDNFが神経細胞の新生を促進する働きを持ち、CRHはストレスに反応するという働きがあることが知られています。

【参考文献】

・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)

・『臨床児童青年 精神医学 ハンドブック』(本城秀次/野邑健二/岡田俊 編,西村書店)

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