うつ病と不登校・ひきこもり⑩(うつ病と自殺について①)
管理者用
うつ病における自殺の危険性
日本の年間自殺件数は1998年以降、3万人超という状況で推移しており、世界的に見ても自殺率の高い国であると言えます。
自殺の大きな原因となっているのが、うつ病や統合失調症などの精神疾患です。うつ病と統合失調症で自殺者全体の25パーセントをも占めていると言われており、自殺をする人の4人に1人が、うつ病や統合失調症にかかっているという、きわめて高い割合になっています。
特に問題となるのは、うつ病や統合失調症などの精神疾患にかかっているにも関わらず、医療機関などを受診して適切な治療を受けていないというケースです。精神疾患を早期に発見して、適切な治療を受けていれば、自殺の多くは予防できる可能性があると考えられています。
うつ病の場合であれば、抑うつや不眠などの変化が現れている場合、家族や周囲の人がこうしたサインにいち早く気づいて、医療機関などの専門家への受診を勧めることがとても重要になります。
【参考文献】
・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)
・『思春期の「うつ」がよくわかる本』(笠原麻里 監修,講談社)
子どもが発する自殺のサインについて
思春期の子どもの死亡原因として、自殺は不慮の事故に次いで多く、第二位となっています。自我が確立できていない思春期の子どもは、短絡的に死を選んでしまうことがあります。
うつ病の子どもは、最初に「死にたいほどつらい」という気持を抱え、その気持が実際の自殺へと発展していきます。自殺を試みる前には、何らかのサインが見られることが多いので、家庭や周囲の大人たちは、それを見逃さないことが大切です。
自殺を企図する場合に見られるサインとしては、次のようなものが挙げられます。
①自殺するための道具を準備する
②服装・身なり・髪型などに気をつかわなくなる
③人柄が変貌する
④不登校・ひきこもりになる
⑤自殺の情報をネットや本で収集するようになる
⑥自暴自棄な言動が増える
⑦自殺念慮・企図についてほのめかす
ここで特に注意する必要があるのは、⑥と⑦ですが、うつ病の子どもが発する「死んだ方がましだ」「死にたい」「消えたい」「誰もいないところへ行きたい」「生きていても意味がない」などという言葉を口先だけのものとして軽視してはいけないということです。
「死にたい」という言葉を、子どもが本気で発している言葉として受け止め、真剣に向き合うことが家族や周囲の大人たち(学校の担任、部活の顧問、塾講師など)には求められています。子どもの自殺念慮・企図に関するこうした一連の言動は、重篤な抑うつ状態に陥っているものと理解した方がいいでしょう。
一般に大人の場合は、抑うつ状態が回復に向かう時期の方が自殺の危険性が高いと言われていますが、子どもの場合はいつでも自殺してしまう可能性があると考えた方がいいでしょう。
「死にたいという人は死なない」という言葉がありますが、こうした言葉を鵜呑みにして軽く考えてしまうと、後で取り返しのつかないことになりますので、十分に注意をすべきなのです。
周囲の大人たちは、子どもの発するサインを軽くあしらって聞き流すのではなく、常に子どもの様子を観察し、その言動に注意を払い続ける必要があるのです。
【参考文献】
・『自傷・自殺のことがわかる本』(松本俊彦 監修,講談社)
・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)
・『こどものうつ ハンドブック』(奥山魔眞紀子/氏家武/原田謙/山崎透 著,診断と診療社 )
子どもの抑うつと自殺
うつ病において最も重要な症状は「抑うつ」です。
抑うつ状態における気分の表出が大人に比べて少ないとされる子どもの場合、家族や周囲の観察がより重要な意味を持ちます。
子どもの抑うつ的な状態では、次のような典型的な症状を呈します。
①元気がない
②笑わない
③よく泣くようになる
④うつむき加減の姿勢が多くなる
⑤表情が乏しくなる
⑥目に生気がなくなる
なお子どもの場合、イライラしたした気分が抑うつ気分の代替症状として現れる場合もあります。ただし、子どものうつ病におけるイライラ気分は、状況に関わらず認められ、しかも程度が著しい場合に限られます。
こうした抑うつ症状を中心に、意欲・気力の低下、倦怠感などが、うつ病の主症状となります。そして副症状として、「思考力・集中力の低下」「自責感・無価値感」「食欲(体重)の増減」「不眠・過眠」などが挙げられます。
【参考文献】
・『DSM-5セレクションズ 抑うつ障害群』(高橋三郎 監訳,医学書院)
・『学校関係者のためのDSM-5』(高橋祥友 監訳,医学書院)
うつ病における「自責感・無価値感」について
うつ病の子どもは、自分に対する価値が感じられなくなり、自己評価が著しく低下していきます。「自分は何をやってもダメだ」「自分ひとりが周りのみんなに迷惑をかけている」などと考えがちになります。
また過去を振り返り、些細なことにこだわり、「あんなことを言うんじゃなかった」「あのときこうしておけばよかった」「もう取り返しのないことをしてしまった」とくよくよします。
さらにこうした状況に対して、「自分が真面目にやらないから、努力しないから」とか「自分が怠け者だから」と自らを責める方向に考えがちになっていきます。
ただし、思春期の子どもは、一般に自己評価が低くなりがちであり、あくまでも程度の大きさにおける識別が必要になります。そして、重要なことは、以前との変化が認められるかどうかということが、識別する際のポイントになってきます。
【参考文献】
・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)
・『思春期学』(長谷川寿一 監修,東京大学出版会)
・『子どものこころの医学』(中村和彦 編著,金芳堂)
うつ病の子どもに自殺を招く危険な因子
うつ病の子どもに自殺を招きかねない危険な要因は、うつ病の要因とも重なることもあります。
①いじめを受けてきた
②虐待を受けてきた
③学業不振(成績が伸びない・下がっている・留年・中退・不合格)
④友だちがいない(できない)・人間関係で孤立している
⑤他人の自殺をネットやテレビで見聞きする
⑥周囲に自殺をした人がいる
⑦身近な人を失った
⑧過去に自殺未遂の経験がある
①②では、近年、不登校やひきこもりの原因としても、次第に深刻な問題になりつつある「部活ハラスメント」など、学校のクラス・教室以外でのハラスメントも含まれるでしょう。
こうした状況の中で、自分の無力さ、無価値に絶望し、心のつらさを断ち切るために、子どもは自殺を考えるようになるのです。
次回のブログでは、うつ病の子どもの自殺を防ぐために家族や周囲の大人たちがどのように理解し、どのような対応を取るべきかについて考えていきます。
【参考文献】
・『小児科医が診る思春期の子どもたち ゲートキーパーのその先へ』(市川光太郎 編著,中山書店)
・『子どもの自殺予防ガイドブック』(坂中順子 著,金剛出版)
・『子どものうつがわかる本』(下山晴彦 監修,講談社)
・『子どもと家族の認知行動療法1 うつ病』(C.ヴァーダイン 他著・下山晴彦 監訳,誠信書房)
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