不登校・ひきこもりと発達障害⑨〔ASDの二次障害〕
管理者用
自閉症スペクトラム障害(ASD)と併存しやすい発達障害
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、注意欠陥・多動性障害(AD/HD)と同様の行動特性を示すことが多く、自閉症スペクトラム障害の6割に注意欠陥・多動性障害が併存すると言われています。
注意欠陥・多動性障害(AD/HD)の行動特性は以下のようなものです。
①注意力障害:不注意である、ケアレスミスが多い、集中力に欠ける、忘れ物、探し物が多い
②多動性障害:落ち着きがなく、じっとしていられない
現在の診断基準であるDSM-5では、自閉症スペクトラム障害と注意欠陥・多動性障害を併記してよいことになっています。
また自閉症スペクトラム障害の中には、漢字の書字や英語の綴り障害、さらには計算障害といった学習障害(LD)の特性を呈していることがあります。自閉症スペクトラム障害の場合、学習障害の特性が見過ごされやすいようですが、注意が必要です。
《参考文献》
・『ASD、ADHD、LD 女の子の発達障害』(河出書房新社:宮尾益知 監修)
・『子どもの心の診療シリーズ2 発達障害とその周辺の問題』(中山書店:宮本信也/田中康雄 責任編集)
・『小児科臨床ピクシス 改訂第2版 発達障害の理解と対応』(中山書店:平岩幹男 専門編集)
ASDは青年期になるまで気づかれないこともある
自閉症スペクトラム障害の場合、言葉の遅れがないこともあるため、その場合は、青年期になるまで本人にも周囲にも気づかれないこともあり、そのまま中学・高校、そして大学へと進学してしまうことも珍しくありません。
高校生や大学生になってから自閉症スペクトラム障害と診断される例も増えているようですが、精神科を受診した不登校・ひきこもり、うつ病や摂食障害の人の中に、自閉症スペクトラムなどの発達障害が見られることが少なくないようです。精神科にかかる診察者の7割弱が何らかの発達障害の可能性があるとされています。
知的な遅れや言葉の遅れがないために、家族や周囲の人たちに自閉症スペクトラム障害と気づかれないことが多く、コミュニケーションが苦手で、マイペースな対人行動を取りやすいなどの特性のために、学校のクラスの同級生たちからいじめられたり、親や学校の教師などからは「やる気がない」と叱責されたりして、特有の生きづらさを感じ続けています。
《参考文献》
・『自閉症スペクトラムの本』(主婦の友社:宮本信也 監修)
・『自閉症スペクトラムがよくわかる本』(講談社:本田秀夫 監修)
・『自閉症スペクトラム障害の診断・評価 必携マニュアル』(東京書籍:S.A.ソールニア/P.E.ヴェントーラ 著)
対応が遅れることで二次障害を引き起こす可能性も
元々は、自閉症スペクトラム障害だけで、併存する精神疾患はなかったのに、同級生からのいじめや大人たちからの叱責・非難が続くことで心理的なストレスが蓄積していくことになりかねません。
前段でも触れたように、自閉症スペクトラム障害に知的な遅れや言葉の遅れが見られない場合には、見過ごされやすくなり、結果的に自閉症スペクトラム障害への十分な理解や適切な支援が遅れていく危険性があります。このため、中学・高校へと学年が上がっていく中で、人間関係や学校生活などの場ではストレスが増大していくことになり、二次障害が引き起こされやすい状態になります。
①学校や塾で教師に激しく叱責されたりすると、適応障害を引き起こし不登校に陥ってしまう。
②本人の「空気を読まない」不用意な発言、過度の自己主張により、クラスでいじめを受けることになる。
③過度の心理的ストレスが自律神経の働きに影響を及ぼし、頭痛・腹痛・吐き気・嘔吐・めまいなどの身体症状を引き起こす。
④自律神経のバランスを崩して、心身症としての起立性調節障害(OD)を引き起こし、朝起きられなくなる。
⑤抑うつ症状を呈し、極端な意欲低下、無気力の状態に陥る。
⑥いじめや叱責など、つらい出来事を強く記憶してしまいPTSD(心的外傷後ストレス症候群)を引き起こす。
自閉症スペクトラム障害への理解や対応が遅れてしまうと、上記のような二次障害を引き起こし、取り返しのつかないことになりかねません。
◆不登校支援ブログ:不登校・ひきこもりと起立性調節障害①~⑨
《参考文献》
・『図解 よくわかる思春期の発達障害』(ナツメ社:中山和彦/小野和哉 著)
・『発達障害のある子どもができることを伸ばす!思春期編』(日東書院:杉山登志郎/辻井正次 監修)
・『最新 子どもの発達障害事典』(合同出版:原仁 責任編集)
二次障害を防ぐには正しい知識と冷静な対応が大切です
自閉症スペクトラム障害の生徒に対しての接し方としては、大声での叱責・注意や否定的な言動は避けるようにしてください。また、命令形口調についても、自閉症スペクトラム障害の人は非常に敏感で、怒られているように感じて萎縮してしまうことがあります。
注意をする場合には、提案型の肯定的な言葉を選び、できるだけゆっくりと優しい口調で話しかけるようにしてください。先程も触れましたが、学校で失敗して教師から大声で叱責されただけで適応障害を引き起こして不登校になることもあります。
自閉症スペクトラム障害の生徒は、従来の「自閉症」のイメージとは異なり、その多くは会話をして、友だちとも遊び、集団行動も行います。ただし、そこでのやり方、参加の仕方において、他者の気持や場の雰囲気を考えずに行ってしまうという行動特性があるわけです。そして先程来、指摘しているように、知的な遅れや言葉の遅れがない場合には、自閉症スペクトラム障害であることは、非常に見過ごされやすくなるわけです。
思春期以降のギャングエイジの時期に入ると、こうした自閉症スペクトラム障害の行動特性は顕著になり、周囲との摩擦が顕在化してくることになりますが、中学生以降になって自閉症スペクトラム障害の認知・行動特性が顕在化してきたときに、周囲の大人たち(親・教師など)の正しい理解と適切な対応が求められてくるのだと言えます。
支援は、理解から始まるわけですが、その生徒に自閉症スペクトラム障害があることを周囲の大人たちが適切に理解せずに接してしまうと、不当な叱責が増え、二次的な障害が引き起こされやすくなるのです。
二次障害が引き起こされた場合には、放置すれば悪化し、その状態が定着してしまう恐れがあります。適応障害や抑うつ症状、強迫性障害、PTSDなどの症状がある場合は、すぐに専門の医療機関(児童精神科・精神科)を受診して適切な対応を開始するようお願いします。
《参考文献》
・『発達障害が引き起こす不登校へのケアとサポート』(学研:齊藤万比古 編著)
・『データで読み解く発達障害』(中山書店:平岩幹男 総編集)
◆不登校・ひきこもりと発達障害①~⑩〔不登校支援ブログ一覧〕
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