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不登校
2016/12/20

うつ病と不登校・ひきこもり⑮(うつ病と認知の歪み・認知行動療法について)

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不登校支援ブログ

うつ病と「認知の歪み」について

うつ病になる子どもには、物事の考え方・捉え方に偏りがあることが少なくありません。こうした偏向した物事の捉え方・考え方を「認知の歪み」と言います。

認知の歪みの例としては次のようなものがあります。

①二分割思考

②極端な一般化

③マイナス化思考

④恣意的推論

⑤すべき思考

⑥自己関連づけ

⑦拡大視・縮小視

⑧自己成就予言

①~⑧を簡単に説明すると以下のようになります。

①「白黒思考」「全か無か思考」などどと呼ばれることがあり、物事を常に両極端に捉える考え方の癖のことです。

②何かよくないことが一つでもあると、「いつも必ずこうなる」とすぐに一般化してしまう傾向のことです。

③よいことも含め、すべてのことを悪いように考えがちだということです。どんな出来事もマイナスの解釈を加えてしまいます。

④確かな根拠もないのに、物事を一方的に決めつけてしまうことです。

⑤「こうあるべき」「すべき」「してはいけない」と自分で自分に制限をかけてしまったり、相手に要求したりすることです。

⑥何かよくないことが起きると、すべて自分に責任があると考えてしまうことです。

⑦物事を極端に拡大解釈したり、逆に重大事をささいなことだと決め付けてしまったりする傾向です。

⑧悪い結果を予想し、自分でそうなるようにしてしまうことです。

以下では、特に①、②、③、⑧を取り上げてみたいと思います。

【参考文献】

・『図解 認知のゆがみを直せば心がラクになる』(福井至/貝谷久宣 監修,扶桑社)

◆【不登校支援ブログ】認知の歪みと不登校・ひきこもり①~⑦

①うつ病の子どもに見られる「完璧主義」

①「二分割思考」について言えば、「全か無か思考」とも言われますが、うつ病の子どもに限らず、その他の不登校・ひきこもりの生徒にも見られがちな認知の歪みの一つであると言えます

こうした「全か無か思考」をする子どもは、物事が100パーセントできなければすべて失敗であると考えがちです。

たとえば、「先月の校内テストでは学年1番ではなく2番だった。自分は無能な人間だ。」、「今回のテストで1箇所ミスをしてしまった。今回のテストは大失敗だ。」、「宿題で1問分からない問題があった。恥ずかしくて情けない。今日は学校を休もう。」などのように、100パーセント達成できなければ、失敗であると考え、自分のやったことを全否定することが珍しくありません。

こうした生徒は、ほんの些細なミスも許容できず、1番以外の成績も受け入れることができず、激しい自責の念に苦しめられることになるのです。

◆不登校支援ブログ:認知の歪みと不登校・ひきこもり②〔全か無か思考(2分割思考)〕

②うつ病の子どもの「極端な一般化」

これも不登校・ひきこもりの子ども一般に当てはまることですが、一つでもダメなことがあるとすべてダメだと考えてしまう傾向があります。

テストで1度でもうまくいかないことがあれば、「これから先もどうせうまくいかない。成績は絶対に上がらない。」と決め付けてしまいます。この結果、やる気が起きなくなり、丸投げの状態のまま1年を終えてしまうということもけっして珍しいことではありません。

成績に限らず、部活でも人間関係でも、たった一度の失敗や嫌なこと、つらいことを経験してしまうと、「いつもダメだ。」と今後のすべてのことに当てはめてしまうわけです。

こうした根拠のない決めつけは、うつ病の子どもに非常にありがちで、結論が飛躍しがちであるとも言えます。

◆不登校支援ブログ:認知の歪みと不登校・ひきこもり③〔過度の一般化〕

③すべての出来事をマイナスに解釈しがちです

この点に関しても言えることですが、うつ病に限らず不登校・ひきこもりに陥っている生徒には非常にありがちな傾向です。

よいことも含めてすべてのことを悪い方に考えてしまうため、実際には悪いことではないのに、何事もマイナスの方向に捉えて、自分を責めることになります。

たとえば、テストでいい成績を取って、それを親や先生にほめられたとしても、「本当はたいしたことないのに、自分に気をつかって、ほめてくれているに違いない。」などのように、現実を素直に受け入れて喜ぶことができません。

それどころか、「自分は周囲に気をつかわせているダメ人間だ。本当に周囲の人たちに迷惑ばかりかけて申し訳ないし、情けない。」と激しい自責の念に苛まれます。

◆不登校支援ブログ:認知の歪みと不登校・ひきこもり①~⑦

⑧うまくいかないように自分で仕向けて失敗する

うつ病の生徒の特徴の一つに、「自分は絶対にうまくいかない」と思い込むだけでなく、失敗するように自ら仕向けてしまうというものがあり、破局形成とか自己成就予言などと呼ばれています。

自分で否定的な予測を立てて自分の行動を制限してしまい、その結果、その予測通り失敗してしまうわけです。その失敗のせいで、否定的な予測をさらに強く信じ込むようになり、悪循環に陥ってしまうのです。

入試を控えている受験生の場合、受験の際に問題が読めないぐらい緊張して落ちてしまうのではないかと心配になり、実際に入試を受けに行くと、不合格になることばかり考えて意識過剰になり、テンパってしまいます。そして、問題にまったく手がつかなくなり失敗して結果は不合格となります。

このようにして否定的な予測が実現することで、「やっぱりそうだった。自分は大学には受からない。」と確信してしまうわけですが、実際には、自らそうなるように仕向けてしまっているのです。

◆不登校支援ブログ:認知の歪みと不登校・ひきこもり①~⑦

うつ病特有の考え方の癖をモニタリングし、修正する

こうしたうつ病の子どもの考え方の癖を本人に気づかせ、修正していく方法として、「認知行動療法」という精神療法は、高い効果が期待され、きわめて有用であるとされています。認知行動療法では、認知の歪みがうつ病を引き起こし、その行動にも大きな影響を及ぼしているという立場を取っています。

その子どもの考え方・捉え方・感じ方の癖や傾向を的確に把握することで、認知の歪みを修正し、行動や感情の変化を期待するのが認知行動療法です。このため、認知行動療法はセルフ・モニタリングを重視した方法論であると言えます。

認知行動療法は、英米では、うつ病や不安障害に治療の第一選択として知られています。アメリカの国立精神衛生研究所(NIMH)が、うつ病・不安障害の第一選択を薬物療法または認知行動療法のいずれかとしています。

【参考文献】

・『考え方の悪いクセを治す 認知行動療法 セルフケアブック』(清水栄司 監修,講談社)

・『自分でできる認知行動療法 うつと不安の克服法』(清水栄司 著,星和書店)

◆不登校支援ブログ:認知の歪みと不登校・ひきこもり①~⑦

認知行動療法は治療エビデンスを獲得しています

科学的な根拠に基づく医療を、エビデンス・ベースド・メディスン(EBM)と言いますが、認知行動療法はEBMとして認められています。

EBMは、データの蓄積に基づいて、それらが根拠となり、その上で選択されるものであり、高い効果が期待できるものです。

認知行動療法は、うつ病・不安障害に高い効果を発揮するというエビデンス(科学的根拠)が、多くの臨床データによって示されてきているのです。

認知行動療法は、脳の前頭前野に働くとされており、脳科学によるエビデンスの提示も期待されています

【参考文献】

・『認知行動療法のすべてがわかる本』(清水栄司 監修,講談社)

◆不登校支援ブログ:認知の歪みと不登校・ひきこもり①~⑦

認知行動療法とポジティブシンキングの違い

認知行動療法とは、1950年代にスキナー、アイゼンクらが始めた「行動療法」の流れと、ベックらが始めた「認知療法」とが融合してできた、精神療法の一つです。

認知行動療法は、その人が「どういう考え方・捉え方」「どういう信念」を持っているかということを問題にし、不合理で不適合な考え方(認知の歪み)を変えていくための方法です。

そして、人の考え方(認知)は、その人の行動や感情とも密接な関係があり、認知行動療法では、偏った認知を変えることによって、その人の行動や感情をも変えていくのが目的となります。

言い換えれば、認知行動療法は、物事の捉え方(認知)を偏りのある否定的な「非適応的認知」から、偏りのない「適応的認知」へと変えていく方法です。この結果として、新たな行動パターンを定着させることが最終的な狙いになります。これは、強引にポジティブに考えるようにしていくということではありません。

認知行動療法の眼目は、主観的な考え方・捉え方を、地に足の着いた客観的なものへと変えていくことにあります。適応的認知とは、事実に即して物事を客観的に捉えることです。このような適応的認知は永続的な強い効果が得られ、うつ病などの病気の再発率を長期的に低減することができるとされています。

これに対してポジティブシンキングは、あくまでも主観的なものであり、地に足の着いた永続的なものではなく、即効性はあったとしても一時的な効果しか得られません。

認知行動療法は、自分の認知特性や行動特性を発見して見つ直し、段階的に修正していく方法であるため、即効性こそありませんが徐々にその効果が出てくるものだと言われています。

【参考文献】

・『子どもと家族の認知行動療法1 うつ病』(C.ヴァーダイン 他著・下山晴彦 監訳,誠信書房)

・『図解 やさしくわかる認知行動療法』(福井至/貝谷久宣 監修,ナツメ社)

◆不登校支援ブログ:認知の歪みと不登校・ひきこもり①~⑦

認知行動療法の受け方について

認知行動療法は、医師や民間のカウンセリングオフィスなどに1~2週間に1度ペースで、3~6ヶ月ほど期間に、面接を繰り返しながら、認知の歪みを修正していきます。

うつ病の場合、医師が認知行動療法を行う場合は健康保険が適用されますが、医師以外のスタッフが行う場合には適用されないので、必ず事前にご確認ください。

最近は、市販の認知行動療法の自助本やインターネットを活用する方法もあり、自分のペースで費用を抑えながらできるという利点もありますが、一度は専門家の指導を受けていただくことをお勧めいたします。

認知行動療法が有効とされているのは、うつ病や不安障害のほかに、気分変調症、非定型うつ病、双極性障害のうつ状態などがあります。

【参考文献】

・『こころが晴れるノート』(大野裕 著,創元社)

・『子どもと家族の認知行動療法1 うつ病』(C.ヴァーダイン 他著・下山晴彦 監訳,誠信書房)

◆【不登校支援ブログ】認知の歪みと不登校・ひきこもり①~⑦

◆【不登校支援ブログ】うつ病と不登校・ひきこもり①~⑮

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