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不登校
2023/06/01

不登校・ひきこもりと睡眠障害③〔睡眠サイクル〕

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ノンレム-レム睡眠のサイクル

私たちの睡眠サイクルは、深い眠りと浅い眠りのサイクルを繰り返しています。

この睡眠サイクルを理解することは、より効果的な睡眠のためにとても重要なことなのです。

【目次】

1.睡眠サイクルとは何か

2.レム睡眠の発見

3.レム睡眠の役割とは

4.ノンレム睡眠は大脳に休息を与える

5.睡眠のスタート時はノンレム睡眠

6.最初のノンレム睡眠が最も大切です

7.ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返して朝に

8.次回は「睡眠とホルモン」を取り上げます

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1.睡眠サイクルとは何か

睡眠サイクルとは、1回の睡眠で「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」のセットを4~5回程度繰り返すサイクルのことです。

1回の睡眠サイクルの時間は平均すると約90分で、1回の睡眠サイクルの中で占めるレム睡眠の割合は、サイクルを重ねるごとに大きくなっていきます。

「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」についてはこの後で少し詳しくご説明しますが、平たくいえば前者は「浅い眠り」、後者は「深く安らかな眠り」ということになります。

約90分を1つの単位として、いくつかの単位がまとまることで一晩の睡眠が構成されているのです。

つまり、浅い眠りと深い眠りのセットを朝の起床時まで繰り返しているというのが、私たちの睡眠サイクルであるといえます。

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2.レム催眠の発見について

レムとは急速眼球運動(rapid eye movement:REM)を意味し、このレムが睡眠中に出現する状態を、そうではない状態(ノンレム睡眠)と区別するために「レム睡眠」と名付けられています。

レム睡眠は、1953年に当時シカゴ大学の大学院生であったアゼリンスキーによって発見されました。さらに、一晩の睡眠時間にレム睡眠が周期的に現れることが分かり、レム睡眠の特徴も研究されました。

レム睡眠期には急速な眼球運動が見られるだけでなく、外見上はよく眠っているように見えるにもかかわらず、脳波は覚醒時に近い周波数の早い脳波像が観察されます。レム睡眠の出現には約90分間隔の周期性があります。

レム睡眠周期に被験者を覚醒させると夢を見ていることがノンレム睡眠周期より多いことも知られています。明け方はレム睡眠が優勢であり、このため朝の起床時に夢の記憶が比較的はっきりしていることが少なくありません。

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3.レム睡眠の役割とは

レム睡眠は、具体的にどのように役に立っているのでしょうか。

レム睡眠時には、大脳皮質は覚醒に近い状態にあるため、大脳に休息を与える働きはほとんどありません。

しかし睡眠中は外界からの情報の入力はほとんどないので、脳内部で記憶の整理や固定など、情報の再編成に適した状態になっていると考えられます。この情報の再編成が「夢」を見させてているのです。

レム睡眠は、大脳皮質が発達していない変温動物(魚類、両生類、恐竜、爬虫類)が、肉体的な疲労を回復させるために開発した休息法であると言われています。

変温動物は、骨格筋の緊張が解かれた麻痺状態にすることで体温を低下させ、エネルギー消費を抑制することで疲労を回復させています。

しかし、このような原始的なレム睡眠だけでは高度に進化し肥大化した大脳皮質を十分に休めることはできないのです。

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4.ノンレム睡眠は大脳に休息を与える

著しく大脳の発達を遂げた恒温動物いおいては、レム睡眠だけではエネルギー消費を十分に抑制することができなくなりました。

また、レム睡眠では大脳機能を低下させることもできません。

ノンレム睡眠は、鳥類や哺乳類のように大脳の発達が顕著な恒温動物のために発達していった生体防御の仕組みであると言えます。ノンレム睡眠は脳波の波形を基に、4段階の睡眠状態に分けることができます。

ノンレム睡眠は、大脳皮質に休息を与えるだけでなく、呼吸や体温、血液循環やホルモン分泌など実に様々な生体機能を制御する役割を果たしています。

健康な成人の場合、入眠後の約180分に深いノンレム睡眠が集中的に出現し、それ以降は浅いノンレム睡眠とレム睡眠の組み合わせになります。

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5.睡眠のスタート時はノンレム睡眠

ヒトは出生後、成人に達するまでノンレム睡眠の割合が拡充していきます。ヒトの場合、成長に従って言語や視界から入ってくる情報が増大していきます。

増大する情報を処理するため睡眠時には大脳を十分に休ませる時間が必要になってきますが、この結果としてノンレム睡眠が拡充していくものと考えられています。このことを裏付ける事実として、大脳が発達した動物の方がノンレム睡眠の割合が多いことも知られています。

健康な成人の睡眠サイクルではノンレム睡眠が最初に出現し、約3時間続きます。(なお正常な小児や、ナルコレプシーに罹患している人の場合は、最初にレム睡眠が出現することがあります。)

ノンレム睡眠は、一晩で4~5回繰り返されますが、2回目以降のノンレム睡眠が最初の眠りより深くなることはありません。特に入眠時の前半90分のノンレム睡眠では、交感神経が優位な状態から副交感神経が優位な状態へと移行し、脳も身体もリラックスしてホルモンバランスが整っていきます。

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6.最初のノンレム睡眠が最も大切です

入眠時の最初の90分が妨害されしまうと、その後の睡眠にも悪影響を与えてしまい、睡眠を長時間取ったとしても疲労が回復せず、起床時には快適な目覚めを得られなくなります。

たとえば翌日は学校が休みだからといって、夜を徹してスマホゲームをし、明け方にようやく就寝しようとしても、興奮状態が続く脳はすぐには眠れる状態にはありません。

また、もともと明け方は概日リズムでは覚醒が開始する時間帯でもあります。このような状態では、眠りにつけたとしても深いノンレム睡眠が訪れることは非常に難しいのです。

最も深いノンレム睡眠のタイミングは、最初に眠気を感じたときであるといわれています。

したがって、どうしてもスマホゲームをしたいというのであれば、眠気を感じた時点で90分程度眠ってしまい、次に来るレム睡眠の時に再度起床する方が身体への負担が少ないと考えられます。

とはいえ、ゲームをやってる途中で一度就寝してから1時間半ほどで起きて、あえて再びスマホゲームをしようなどと考える人はめったにいないかもしれません。しかし単純な理屈で考えればお分かりのように、一度深いノンレム睡眠を経験しておけば、大脳と身体の疲労感は最低限取れることになるのです。

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7・ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返して朝に

ノンレム睡眠の後に訪れるのがレム睡眠です。レム睡眠になると脳は覚醒しているときと同じぐらい働きますが、身体は眠っている状態なので筋肉は弛緩しています。

さらにその後、一定の周期でノンレム睡眠とレム睡眠を相互に繰り返して朝を迎えることになります。

健康な成人の睡眠サイクルの場合、ノンレム睡眠は次第に浅くなり、レム睡眠は少しずつ長くなっていきます。明け方に向けて、覚醒作用のあるコルチゾールの分泌が増加していきます。

健康な睡眠サイクルで眠ることができている場合は、コルチゾールの分泌により、体温、血圧、脈拍が上昇していき、目覚めるための身体の準備が整っていきます。

コルチゾールは覚醒後もしばらくは大量に分泌され、日中の活動に備えていくことになるのです。「準覚醒機構」と呼ばれるレム睡眠の働きよって、私たちは起床時に脳を活性化させているのだと言えます。

逆に言うと、明け方が近くなると「準覚醒機構」が働くようになるため、夜更けまでスマホゲームをした後にぐっすり眠ることは非常に難しいことなのです。

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8.次回は「ホルモンと睡眠」について考えます

最初のノンレム睡眠で失敗すると、その後朝まで続くレム睡眠との相互サイクルにも大きな支障を来します。

つまり睡眠サイクルでは最初の約180分のノンレム睡眠の中でも、特にその前半の90分が最も大切な時間帯になるということです。

翌日が休みだからと言って明け方近くまでゲームに興じてしまうと、いくら長時間の睡眠を取っても翌日疲れが取れていないのはこのためです。

今回はレム睡眠とノンレム睡眠の相互サイクルについて述べましたが、次回記事では、「睡眠時のホルモン分泌」の関係についてさらに詳しく取り上げていきたいと思います。

今回の記事でも強調してきましたが、最初のノンレム睡眠の特に前半90分は一番大事な時間帯となります。この時間帯に、成長ホルモンをはじめてとした主要なホルモンが集中的に分泌されます。それについて次回の記事で詳しく触れたいと思います。

今回の参考文献について、以下に列挙させていただきます。

【参考文献】50音順

・子どもの睡眠ハンドブック(駒田陽子/井上雄一編,朝倉書店)

・小児科臨床ピクシス14睡眠関連病態(五十嵐隆総編集,中山書店)

・睡眠障害の子どもたち(大川匡子編著,合同出版)

・睡眠の科学(櫻井武著,講談社)

・好きになる睡眠医学第2版(内田直著,講談社)

不登校・ひきこもりと睡眠障害④〔睡眠時のホルモン分泌〕

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