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不登校
2016/03/18

不登校・ひきこもりと不安障害について④〔社会(社交)不安障害〕

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不登校支援ブログ

社会(社交)不安障害の悪化でニートに陥る危険性も

社会(社交)不安障害は、社交的な場面・状況で、自分が他者からどう見られているかを不安に感じ、そのような場面・状況を避けるようになる不安障害です。

他者からの否定的な評価を受けることに強い不安を抱き、他者の視線に晒されるような場面・状況を避けるようになるため、日常生活、学校生活に大きな支障を来たすことになります。

社会(社交)不安障害〔SAD〕は、非全般性と全般性の2つのサブタイプに分類されます。

非全般性の場合、特定の場面・状況に不安・恐怖を感じるという特徴があり、全般性の場合には、様々な場面・状況に不安・恐怖を感じるという特徴があります。全般性SADでは、ひきこもりに発展していく可能性もあるため、特に注意が必要です。

また、SADになってしまうとうつ病などを合併する可能性も指摘されており、たとえば高校在学中に症状が悪化して卒業までに回復できないまま卒業してしまうと、ニートになる危険性が増大します。

SADの疑いがある場合は、専門の医療機関を受診し、早期発見に努めることをまずはお勧めします。症状を悪化させないことで、高校卒業後にニートになってしまうことを未然に防ぐ必要があります。

【参考文献】

・『学校関係者のためのDSM-5』(高橋祥友 監訳,医学書院)

・『子どもの心の診療シリーズ  子どもの心の処方箋ガイド』(齊藤万比古 総編集,中山書店)

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SADの発症年齢は中学・高校生の時期と重なりやすい

SADの人は、対人関係状況に入る可能性があると強い不安を感じて、そうした状況を避けようとします。また、やむを得ずそうした状況に入らざるを得ない場合は、非常に強い苦痛を感じることになります。

SADの発症年齢は10代半ばとされているため、中学・高校生の時期に重なっていることになります。こうしたことから、不登校やひきこもりの要因としてきわめて注意が必要になってくると言えます。

SADでは、日常的な様々場面で不安・恐怖、そして回避行動が生じてきます。

①教室の討論、授業中の発表などの場で、人前で話す

②教師や部活の顧問・監督・先輩など、目上の人と話す

③学校生活の中で、他の生徒の視線を浴びる

③教師や、部活の顧問・監督・先輩に叱責される

④授業中に教室の前に出て黒板に字を書く

⑤授業中に問題演習などをしているときに、教師に机間巡視で見られる

⑥昼食時に教室で飲食をする

⑦自宅で電話に出る

⑧見知らぬ人と話す

上記の社交場面の中でも、特に「多くの人前で話す」、「他人の視線を浴びる」、「目上の人と話す」といった場面であると言われており、一般にSADの人が最も避けたい、逃げ出したいたいと恐怖を感じるのは、「他人の視線を浴びる」という状況であると言われています。

学校生活で回避の対象となるのは、人前での会話、書字、飲食、あまりよく知らない人との面談ということになりますが、こうしたことをすべて避けようとした場合には、言うまでもなく不登校・ひきこもりに陥る可能性が高くなっていきます。

【参考文献】

・『不安障害の認知行動療法(2) 社会恐怖 患者さん向けマニュアル』(G.アンドリュース 他著,星和書店)

・『社会不安症がよく分かる本』(貝谷久宣 監修,講談社)

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SADにおける「不安」の内容と身体症状

前段では、どのような場面で不安や恐怖、回避行動が出やすいかについて挙げましたが、具体的な不安の内容は次のようになるでしょう。

【事例1】学校の討論会や授業中に発表しているときに声が震えたり顔がひきつったりしていると、教師や他の生徒に気づかれて恥ずかしい思いをするのではないかという不安。

【事例2】手が震えていることに気づかれるのではないかと心配になり、他の人がいるところで字を書いたり、食事をしたりすることを極端に意識して避けるようになる。

こうした他者の注視を過剰に意識することで生じる不安は、生理的な反応を伴いやすく、紅潮、動悸、声の震え、発汗、胃腸の不快感、下痢などが見られやすくなります。

そしてこの身体症状から、保健室登校・別室登校をするようになる生徒も出てきますし、これが常態化してくると、かりに登校できたとしても教室で授業を受けたり、友人たちと談笑したり、という正常な学校生活を送ることが非常に難しくなってくるのです。

【参考文献】

・『社交不安症UPDATE エスシタロプラムによるアプローチを中心に』(小山司 編,先端医学社)

・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)

◆【不登校 個別対応】にしおぎ学院:入塾までの流れ

SADになってしまったと思ったら 

親が子どものSADに気づくポイントとしては、①「学校で友だちがいない、できない」、②「他人と話すのを極端に嫌がる」、③「家族以外の人間と話したがらない」の3点が挙げられます。

子どもが登校することを嫌がり始め、頻繁に遅刻早退、欠席を繰り返すようになったり、休日も外出をせず自宅にこもりきりになったり、学校の友人と遊んでいる様子がなかったりしているようであれば、SADの可能性もあるので、担任やスクールカウンセラーに相談し、保護者もSADに関する知識を持つことが必要になってきます。

保護者だけで医療機関に相談して、医師からこの病気のことについて説明を聞くということでもいいと思います。

【参考文献】

・『不安障害の子どもたち』(近藤直司 編著,合同出版)

◆【不登校・ひきこもりからの学び直し】にしおぎ学院について

SADが悪化すると治療が難しくなるので注意が必要です

SADは初期の段階で医療機関を受診すれば、十分に治療が可能です。しかし、そのまま放置しておくと他の心の病気を併発していくことになり、長期化していく可能性があります。

SADの症状が出始めているのに気がつかないケースで最も多いのは、「自分の性格のせいだ」と勝手に思い込んでいるケースです。こうした場合、この生徒は不安や恐怖をひたすら我慢することになりますので、家族の注意が必要です。

SADが悪化し長期化してくると、苦痛によるストレスが心に負荷をかけるようになります。このため、SADが長期化するにつれて負荷かかかりやすくなり、やがてうつ病、パニック障害、摂食障害などの別の精神疾患を併発しやすくなります。

他の精神疾患と合併すると治療が困難になり、完治が難しくなるのです。こうした理由からも、SADの早期発見・早期治療は大切になってくるのです。

【参考文献】

・『くらしの中の心理臨床 不安』(青木紀久代/野村俊明 編.福村書店)

・『図解 やさしくわかる社会不安障害』(山田和夫 監修,ナツメ社)

◆不登校支援ブログ:不登校・ひきこもりと不安障害について①~⑦

うつ病はSADと最も合併しやすい

SADによって学校生活をうまく営めなくなった生徒の場合、「自分はダメ人間だ」などと自己否定しがちになります。自己否定感情が強くなってしまうと、うつ病を発症しやすい精神状態になっていきます。

SADの70パーセントが、うつ病を併発しており、かなり高い確率で発症することをしておく必要があります。SADが悪化してうつ病を発症していくプロセスはおおむね次のようになります。

(1)人前で恥をかくことに不安や恐怖を感じる⇒(2)学校に行かなくなり、友だちとの付き合いも避けるようになる⇒(3)学業に深刻なダメージが出る⇒(4)自分が本来持っているはずの能力を発揮する場を失う⇒(5)大学進学など自己実現の機会を失う⇒(6)自己否定感情が増大し、うつ病を発症する

【参考文献】

・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』

◆不登校支援ブログ:うつ病と不登校・ひきこもり①~⑮

全日制でSADを発症して通信制へ転学の場合

全日制高校でSADを発症して不登校・ひきこもりになり、やむなく通信制高校へ転学・転籍する生徒も少なからずいると思います。

ここで問題になるのは、通信制高校に移った後も、カウンセラーや医師に相談せずに放置しておくと、大変危険であるということです。

通信制高校は文字通り、通学機会のほとんどない高校で、あまり通学しなくても卒業単位は取得できます。しかし、SADの疑いがありながらそのままやり過ごしてしまうと、高校卒業後に未就学・未就労の状態に陥る可能性があるということです。

以前のブログでも指摘しましたが、通信制高校卒業生の約45パーセント(およそ2人に1人)が、進路未決定であるという事実もあり、これら進路未決定者のうちどれぐらいの割合が、SADやうつ病などの精神疾患なのか、正確なことはもちろんわかりません。

しかし、もしSADの疑いが少しでもあるようであれば、早期に手を打つことに越したことはありません。何度も繰り返して恐縮ですが、後になって取り返しのつかないことになる前に、専門の医療機関を受診されることを強くお勧めいたします。

次回以降のブログでも、SADとの関連で、うつ病のほかパニック障害や摂食障害についても順次述べていきたいと思います。

◆【にしおぎ学院:不登校支援ブログ】通信制高校卒業にゼロからの学び直し 

◆【にしおぎ学院:不登校支援ブログ】不登校・ひきこもりと不安障害について①~⑦まとめ

◆【東京】不登校対応の個別指導塾にしおぎ学院について

 

 

 

 

 

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