うつ病と不登校・ひきこもり③(うつ病の要因について①)
管理者用
うつ病の病因について
うつ病の病因については、まだ完全に解明されたわけではありませんが、さまざまな要因が関連していると考えられています。
第一には、遺伝的な素質あるいはより早期の体験によって生じる素因、または体質的な要因が挙げられ、第二には、誘発する契機となるストレスイベント(ストレスフルな出来事)が挙げられます。
誘因因子は、両親の不和などの家庭環境の問題、学校などでのいじめ、虐待、体罰、また最近では、「部活ハラスメント」などもあり、ストレスの強いライフイベントである場合もある一方で、こうした明らかなストレスイベントが認められないということもあります。
こうした一連の要因が、生化学的、心理的なプロセスを経て、うつ症状を生じさせ、一旦発症すると、さまざまな維持因子によって、症状が持続することになります。
後に述べるように、発達障害の問題、そしてそれに対する家庭・学校の問題が、うつ病の発生要因として大きなウエイトを占めてくることが少なくありません。
【参考文献】
・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 監修,中山書店)
・『子どものうつ ハンドブック』(奥山眞紀子 他著,診断と治療社)
・『子どものうつがわかる本』(下山晴彦 監修,主婦の友社)
不登校・ひきこもりが誘発因子、維持因子になることも
不登校・ひきこもりの原因となった心理・社会的なストレスが同時に、うつ病の誘発因子になることもあります。
また逆に、不登校・ひきこもりの常態化によってもたらされる自己不全感、自己否定感情、自尊心の喪失など、自己評価に対するネガティブな感情が、うつ病の誘発因子になるということも考えられます。
そして、不登校・ひきこもりの常態化・固定化が、うつ病の維持因子にもなり得ますので、不登校・ひきこもりとうつ病の関係については、十分な知識を持っておくことが重要になります。
【参考文献】
・『思春期の「うつ」がよくわかる本』(笠原麻里 監修,講談社)
子どものうつ病のサインは身体の不調に現れやすい
小学校低学年(1~3年)のうつ病のサインは、ほとんどの場合、身体の不調として現れます。具体的なサインとしては、以下のものが挙げられます。
「赤ちゃん返り」「急に泣き出す」「頭痛」「腹痛」「疲れやすい」「食欲がない」「寝つき・寝起きが悪い」「イライラする」などの状態が長引く場合、小児科・内科などの身体科で診てもらっても原因がはっきりしないようであれば、うつ病を疑ってみる必要があります。
こうした原因不明の身体の不調が長引くことで、学校に行きたがらなくなり、不登校へと発展していくこともありますので、単なる「サボり」「わがまま」「ぐずり」などと決めつけるのではなく、子どものうつ病のサインを見逃さないように注意することが大切です。
【参考文献】
・『子どもの心の診療シリーズ 子どもの心の処方箋ガイド』(齊藤万比古 総編集,中山書店)
発達障害とうつ病
子どものうつ病は、発達障害から発症することが少なくありません。
具体的に言えば、自閉症スペクトラム障害(ASD/高機能自閉症、アスペルガー症候群)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの認知行動特性が見られた場合は、うつ病を発症してしまう前に早期のケアを始めることが重要です。
授業中に歩き回る、順番が待てない、集中できない、などの特徴があれば、ADHDの可能性がありますし、読む、書く、計算するというような学習が苦手な場合は、LDの可能性があります。そして、同年代の他者との関わりやコミュニケーションが苦手な場合は、ASDの可能性があります。
小学高学年(4~6年)の年代には、幼少時の軽いうつ傾向が見逃された結果として症状が重症化しているケースがあり、ADHD、ASDなどへの配慮が全くなされないまま、うつをこじらせてしまっていることが珍しくありません。
【参考文献】
・『図解 よくわかる思春期の発達障害』(中山和彦/小野和哉 著,ナツメ社)
子どものうつ病における発達障害と環境の問題
最初に述べたように、うつ病の発症要因としては、第一の身体的な要因と第二の誘発的な要因がありますが、子どものうつ病の場合、発達障害(ASD、ADHD、LD)が第一要因であるとすれば、家庭・学校という環境因子が第二の病因、誘発因子になると考えられます。
子どもの発達障害にうまく対応できていない場合、家庭・学校という環境因子が、うつ病の誘発因子になっているとしておかしくはありません。
発達障害は脳の一部に機能不全が見られるため起こると考えられていますが、周囲の正しい理解と適切なサポートが不足すると、ストレスを抱え込みやすくなり、うつ病を発症してしまうリスクも増大します。
【参考文献】
・『子どものうつ病』(長尾圭造 著,明石書店)
適切な対応でうつ病の発症リスクを軽減する
発達障害の中でも、うつ病の発症リスクが大きいのは、特にADHDとLDだと言われていますが、社会性や対人関係の発達が遅れるASDも注意が必要です。
LDの場合、学習面での問題を抱えやすく、特に高校入試を控えた勉強が難しくなり始める中学3年生ごろからつまづきが目立ってくるようになります。LDの場合、特定教科・科目が極端に苦手になる傾向があります。このため、自尊心が傷つけられ自己評価も低下していきます。
ADHDの場合、不注意、多動、衝動性という3つの特徴的な症状が絡み合い、問題行動を招くことが多くなります。そしてADHDは、二次的に「うつ」などの心の問題を抱えやすいと言われています。
発達障害の子どもは、何気ないことが大きなストレスになることも珍しくはありません。学校生活や同級生たちの言動などで、それほど重大には思えないような些細なことでも、ストレスになる可能性があります。
対応法は、得意なことはしっかりとほめ、苦手なことは丁寧にサポートしてつまずきを解消し、自尊感情を損なわないよう気をつけてあげることです。「できない」という自己否定的な感情ではなく、「できる」という自己肯定的な感情を持たせることで、うつ病が発症するリスクを軽減していくことが大切です。
【参考文献】
・『子どもの心の診療シリーズ2 発達障害とその周辺の問題』(宮本信也/田中康雄 責任編集,中山書店)
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