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不登校
2021/05/22

不登校学習支援における《パーソナルスペース》としての《ソーシャルディスタンス》の重要性

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不登校支援ブログ

★にしおぎ学院では不登校学習支援における「パーソナルスペース」(「ソーシャルディスタンス」)の必要性を、コロナ禍になるずっと以前から主張し続けてまいりました。

★「ソーシャルディスタンス」の本来の語義に着目し、人類学や心理学の概念であるパーソナルスペースの中で、ソーシャルディスタンスがどような位置づけであるかを確認します。さらに不登校個別対応におけるソーシャルディスタンス(2m以上)確保の重要性について考えます。ソーシャルディスタンスの確保によって「感染対策」と「不登校学習支援」の両立を目指します。

★にしおぎ学院の対面授業は、完全個室制の個別指導(1対1)です。対面授業では、2~2.5mのソーシャルディスタンスを実現しています。対面授業のほか、ZOOMによるオンライン授業も行っています。

【目次】

1.ソーシャルディスタンスとソーシャルディスタンシング

2.パーソナルスペースとしての「ソーシャルディスタンス」

3.「パーソナルスペース」とは何か

4.E・ホールにおける「パーソナルスペース」の4つのグレード

5.不登校生に見受けられる心理的な特徴について

6.不登校生のパーソナルスペース

7.不登校生におけるソーシャルディスタンスの大切さ

8.「感染予防」と「パーソナルスペース確保」の両立

9.パーソナルスペースの無視は不登校対応にとってハイリスク

10.面談の際もパーソナルスペースを確保しています

◆【不登校 個別対応】にしおぎ学院:コース案内

1.ソーシャルディスタンスとソーシャルディスタンシング

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、厚生労働省ではマスク着用・手洗い・消毒・うがいのほかに、ソーシャルディスタンス(社会的距離)について提唱しています。

厚生労働省を中心に政府・自治体は、人と人との間隔はできるだけ1~2m空けるよう繰り返しアナウンスしているわけですが、この対人距離をソーシャルディスタンス(社会的距離)と言っていることは周知のことであろうと思います。「3密の回避」という言葉も、「ソーシャルディスタンス」の考え方に基づいていると言っていいでしょう。

日本では「ソーシャルディスタンス」という言葉は感染予防の用語としてすでに定着している感があります。しかし世界的に見れば、感染予防のために適切な対人距離をとることは、正しくは「ソーシャルディスタンシング」と呼ばれているようです。つまり、その意味では日本での「ソーシャルディスタンス」という言葉の使い方は誤用であると言っていいのかもしれません。

ちなみに世界保健機構(WHO)は、感染予防に適切な人と人との距離のことを表す際に、ソーシャルディスタンスという呼称ではなくフィジカルディスタンス(物理的・身体的距離)という呼称を推奨しているようです。

◆【不登校 学習支援】にしおぎ学院の感染予防対策について

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2.パーソナルスペースとしての「ソーシャルディスタンス」

ところで「ソーシャルディスタンス」という用語は感染予防の際に用いられていた言葉であるというより、元来、社会心理学・文化人類学における「パーソナルスペース」という上位概念の下で用いられていた下位概念にほかなりません。

以下では、「パーソナルスペース」「ソーシャルディスタンス」というそれぞれの概念について略述し、さらにこうした「人と人との距離のとり方」が、不登校個別対応に際してきわめて本質的な問題となってくるということについても触れていきたいと思います。

そしてその際に、不登校生の心理的特性・傾向についても詳しく触れたいと思います。こうした特性や傾向が、個人のパーソナルスペースの広さに大きな影響を及ぼすことになるからです。

そして、感染予防対策の問題と不登校対応の問題は、「人と人との距離のとり方」という観点から両立可能な問題であるばかりか、本来的に両立すべき問題あるということについても述べていくことになります。

つまり身体の「安全」と心の「安心感」は両立すべき問題であるということです。

◆【不登校 塾】にしおぎ学院の個別指導とパーソナルスペースの重要性

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3.「パーソナルスペース」と何か

人は自分の身体の周辺空間を自分の空間であると認識しています。空間を介して人の行動に注目した学問体系を総称してプロクセミックス(近接学)と呼びます。

プロクセミックスにおける中心概念こそが「パーソナルスペース」であり、人間の固有空間がそれを取り巻く他者との関係、あるいは物理的空間関係の重要な核となると考えられるからです。

パーソナルスペースという概念は、もともと建築心理学のR.ソマーによって提唱されたものです。ソマーによる「パーソナルスペース」の定義は次の通りです。

①持ち運びのできるテリトリー空間である

②他者の侵入を許さない

③個人を取り囲む見えない境界

このパーソナルスペースは、他者に侵入されると不快感や拒絶感を抱く対人距離であるとされています。

分かりやすく言うと、パーソナルスペースとは他者に近づかれると不快に感じる空間のことです。

こうした他者との対人距離が人の心理に影響を与えることについて、文化人類学者のエドワード・T・ホールは上記のプロクセミックスを前提に、独自の視点で以下の4つのグレードに分類しています。

◆【不登校 塾】にしおぎ学院の個別指導とパーソナルスペースの重要性

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4.E・ホールによる「パーソナルスペース」の4つのグレード

E・ホールは、人は自分を中心とした円形の4つのパーソナルスペースを有しており、相手に合わせてそのパーソナルスペースを使い分け、相手に応じた対人行動を取っているとしています。ホールは、文化人類学的な関心から、個体の距離に注目しました。同種の個体が相互に置く正常な空間のことで、その空間は人の防衛領域を示します。

ホールによれば、パーソナルスペースはいつも同じ広さの空間ではなく、他者との関係性によって自在に変化・異動するものであるとされ、他者との具体的な距離によって次の4つのグレードが示されています。

①親密ゾーン:自分の身体の半径約50cm以内の円の中のスペースで、密接距離とも呼ばれます。さらにこの親密ゾーンを、近接相と遠方相に分類した場合、親密ゾーンの近接相は0~15cm、遠方相は15~45cmとされています。これだけ接近できるのは、家族などを含めごく親密な関係の人だけに限られます。逆にこのスペースの中に入っても許容されるなら、受け入れられているということを意味しています。

②対人的ゾーン:半径50cm~1m程度の円の中で、個体距離とも呼ばれます。相手の表情が読み取れる距離で、相手と親しく会話ができる距離です。対人的ゾーンの近接相は45~75cm、遠方相は75cm~120cmです。対人的ゾーンは、手を伸ばせば触れることのできる距離であり、多少の身体的接触があっても許容されるプライベートな距離感であるといえます。

③社会的ゾーン:半径1~3m程度の円の中のスペースで、社会距離(ソーシャルディスタンス)とも呼ばれます。相手には手は届きづらいが、会話は成立する距離です。社会的ゾーン(社会距離)の近接相は1.2~2m、遠方相は2~3.5mで、フォーマルな人間関係の際に用いられるパーソナルスペースです。この社会的ゾーン(社会距離)においては、相手との個人的関係は成立しえますが、あえて必要以上に親密になるつもりがない相手との距離が十分に確保できるといえます。

④公的ゾーン:半径3m以上の広いスペースで、公衆距離とも呼ばれ複数の相手を見渡せる距離です。公的ゾーンの近接相は3.5~7m、遠方相は7m以上で、これだけ離れていると相手との個人的関係は通常成立しえません。なぜなら相手は個人ではなく、公衆・大衆の一人となってしまうからです。

◆【不登校 個別指導】にしおぎ学院の3つのSについて

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5.不登校生に見受けられる心理的な特徴について

実はパーソナルスペースには個人差があることも知られています。したがって不登校に陥りがちな生徒のパーソナルスペースについても慎重に検討していく必要があるといえるでしょう。物理的な距離をつめていくこと、馴れ馴れしくべたべたすることが「生徒の気持ちに寄り添う」ことであるというような誤認に陥らないようにするためにも、そのことは大切なことなのです。

ここで不登校に陥りやすい生徒のパーソナルスペースについて考えていく前に、不登校生に見受けられる心理的な特徴について触れておく必要があります。不登校に陥りがちな生徒、すでに不登校に陥ってしまっている生徒に多く見受けられる心理的な特徴・傾向としては次の5つが挙げられます。

①自分にとって苦手な人には距離をとりたがる(自分のテリトリーを守りたい・他人との壁をつくりやすい)

②心配性で慎重に物事を判断する(物事の判断や決断に時間がかかる・他人に急かされるのが嫌)

③マイペースで集団行動が苦手(他人から自分のペースを乱されることが我慢できない)

④自己愛が強い(友人たちといるより一人で過ごす時間の方が好き・恥をかいたり傷ついたりしたくない)

⑤こだわりが強い(自分だけのルールや趣味に対するこだわりが強い・他者の介入を許せない)

いかがでしょうか。これらをご覧になって思い当たる節があるという人は少なくないのではないでしょうか。

なお、自己愛と不安の関係についてはこちらをご参照ください⇒不登校支援ブログ:不登校・ひきこもりの背景にある「不安」について

そしてこうした特徴や傾向が顕著になればなるほど、パーソナルスペースは通常よりも広くなっていくことは想像に難くありません。他者をできるだけ遠ざけることで自分を守りたいという気持ちが、より一層強くなっていくからにほかなりません。

◆【不登校 塾】 にしおぎ学院の個別指導とパーソナルスペースの重要性

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6.不登校生のパーソナルスペース

自分にとって苦手な人と関わりたくないという気持ちが強くなれば、自分に接近しようとする危険や不利益から自分を守ろうとする意思が強く働くため、パーソナルスペースは必然的に広くなっていきます。

学校生活をしていく中では、性格上でどうしても相性の悪い人も出てきます。そうした人と接すると不快感や嫌悪感を抱いたり、あるいは極度に緊張したりすることもあると思います。自分にとって苦手な人と関わることで生じる心理的な不利益を事前に排除していくうちに、人との間に距離をとることが常態化していくわけです。

また、もともと集団行動や集団生活が苦手で、自分のペースやルールを守りたがる傾向が強い場合は、他者に合わせたたり、他者に干渉されたりすることが苦痛になりがちだといえます。

こうした性向の人が不登校に陥った場合は、積極的に人との距離を縮めようとはしないため、パーソナルスペースは広くなります。

そして不登校が常態化したり、ひきこもり状態が長期間継続してしまうと、テリトリー意識はさらに強化され、パーソナルスペースに侵入されることに強い警戒感・嫌悪感を抱くようになります。

◆【不登校 個別相談】にしおぎ学院:無料教育相談フォーム

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7.不登校生におけるソーシャルディスタンスの大切さ

ところで、新型コロナウイルス感染症の拡大を避けるために物理的な距離(フィジカルディスタンス)を2m以降確保することを、私たちは「ソーシャルディスタンス」と言うのが当たり前になっています。

「ソーシャルディスタンス」という用語は、上述したE・ホールのパーソナルスペースのグレードを示す「社会距離(社会的ゾーン)」を本来は指しています。ホールの社会距離(ソーシャルディスタンス)は先程も触れたように、相手に直接触れることのできない距離であり、自分のテリトリーを確保することの可能な距離であるともいえます。

社会距離(ソーシャルディスタンス)とは、実は前段でご説明した不登校生の心理的な特性や傾向に適合しやすい距離であり、自分のテリトリーを守り、警戒心を解きやすいパーソナルスペースだということになるわけです。

その意味で、感染予防のための2mという物理的距離(フィジカルディスタンス)は、不登校生の「安心感」を確保するパーソナルスペースとしての社会距離(ソーシャルディスタンス)としても確実に有効であるとは言えないでしょうか。

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8.「感染予防」と「パーソナルスペース確保」の両立

にしおぎ学院は、不登校対応専門に特化した完全個別指導塾です。

新型コロナウイルス感染の拡大が始まる以前から、にしおぎ学院ではパーソナルスペースにおける社会距離(ソーシャルディスタンス)の確保に努めてまいりました。

不登校・ひきこもりを経験している生徒にとって、心理的な安心感を担保するためには、講師と生徒の対人距離を十分に確保することが大前提であると考えているからにほかなりません。

にしおぎ学院では、完全個室制の個別指導を採用しており、生徒1人に講師1名の完全マンツーマンでありながら、対人距離は2~2.5mを確保しています。

不登校に陥っている生徒にとって大切なのは、この広い空間、そして空席の多さなのです。

がらがらの教室で、座席に座っているのは、教室内で自分ひとりしかいないという、空間に対する満足感、充足感を、私たちは重要だと考えています。安心感と満足感が全く得られないすし詰めの密着状態の教室の中では、勉強に専念することなど到底できないからです。

ソーシャルディスタンス2mの確保は、感染予防対策としても有効であるだけでなく、不登校個別対応における適切な距離の確保のためにも必要不可欠なのです。その意味で、この両者の問題は矛盾することではなく、むしろ両立可能であり、本来的に両立すべき問題であるとさえいい得るでしょう。

生徒の「安全」と「安心」の両立を目指すためにも十分なソーシャルディスタンスをとることは重要なのです。

◆【不登校 塾】にしおぎ学院の感染予防対策について

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9.パーソナルスペースの無視は不登校対応にとってハイリスク

不登校、特にひきこもりの期間が長期に渡っている生徒の場合、パーソナルスペースがそれ以前よりも広くなっている可能性があります。

こうしたパーソナルスペースの問題を一切無視して不登校個別対応を行うことはきわめてハイリスクであるといわざるを得ません。

ありがちなのは、初対面の生徒に対して心理的な距離を縮めようとして、いきなり大きな声で挨拶をしたり(話しかけたり)、必要以上にフレンドリーな(馴れ馴れしい)接し方をしたり、そして物理的な距離を詰めて接近したりすることです。

これらの行為は、生徒との心の距離感をなくして早く親密になろうとする意図でなされるものです。しかし、寄り添って共感することと、これらの行為は相容れないものであるという点についてはしっかりと理解する必要があります。この点を誤解している人があまりに多いのです。

つまり、こうした一連の行為は、生徒への共感どころか相手(生徒)のことを全く理解せず、大人の側の善意(エゴ)の押し付け以外の何物でもないといえるでしょう。

不登校・ひきこもりの期間が長い生徒は自分自身で思っている以上に自意識が肥大化し、他者への警戒心が強化されている可能性が高いのです。

このような状態で、初対面の他者が無神経に土足でずかずかと自らのパーソナルスペースに足を踏みこんできたら、おそらく緊張と恐怖で耐えられなくなるのではないでしょうか。

◆【不登校 学習支援】にしおぎ学院:入塾までの流れ

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10.面談の際もソーシャルディスタンスを確保しています 

 にしおぎ学院ではご入塾ご希望の方には必ず無料教育相談を行っています。

そして二者、三者にかかわらず、面談の際にも必ずソーシャルディスタンスを確保するよう努めています。

不登校・ひきこもりの期間が長い生徒の場合、家族以外の他者に会って会話をするということ自体が久しぶりだということが珍しくありません。久々に会う他者に対する不安や恐怖を軽減するためにも、やはりソーシャルディスタン2mの距離をとることは大切になってきます。

相手(生徒)との親密性を高めるために物理的距離を詰めることは、先程来ご指摘しているように非常に危険です。多くの人が誤解しているようですが、あまりに近すぎる距離感は相手(生徒)との心の距離をかえって広げてしまう可能性が高いといえます。

ソーシャルディスタンス2mの間隔を保つことは、生徒の「安心感」をあくまで優先する上では必要不可欠な取り組みなのです。

自分が守られていると感じることで、人ははじめて不安や恐怖が和らぎリラックスした状態で、心を開いて他者に接することができるのです。

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