不登校・ひきこもりと発達障害②〔見過ごされやすい発達障害〕
管理者用
見過ごされることがある発達障害
前回のブログでも指摘しましたが、不登校・ひきこもりの児童・生徒の事例の中には、発達障害の人が少なくありません。
抑うつ症状や不安、強迫症状、幻覚妄想状態、睡眠障害などの症状を呈することもありますが、これらの症状の中でも、抑うつと不安の頻度が非常に高いと言えます。
このような発達障害の症状の悪化が原因で、不登校やひきこもりに陥っていく可能性もあるわけですが、発達障害であることを見過ごされてしまうことも珍しくありません。後で述べるように、幼児期から小学低学年あたりまで、周囲にもあまり気づかれないことがあるのです。
知的障害のある場合には、特別支援学校に通うことになりますが、知的な遅れのない発達障害の場合は、定型発達の人たちと同じく通常学級に在籍・通学することになります。
学校で問題行動を起こすことが頻繁にあれば、教師はその子が発達障害であることに気づくことがあると思いますが、取り立ててトラブルを起こすこともなく、学業成績もそれほど悪いというわけでなければ、発達障害であることを見過ごされたまま、学校生活を送り続け、進級していくことになるわけです。
【参考文献】
・『発達障害を見過ごされる子ども、認めない親』(星野仁彦 著,幻冬舎)
知能が高いから発達障害の程度が軽いというわけではない
ここで重要になってくるのは、知能が高いからと言って、発達障害の症状が軽くなるというわけではないということです。
ちなみに、知能指数(IQ)69以下を示す場合、知的障害ということになります。米国の精神科医レオ・カナーが、社会性や言語発達能力の発達に遅れのある子どもたちを自閉症として報告したのが1943年のことですが、その自閉症の子どもたちの多くに、知的障害が認められたのです。
したがって、このことから、この当時は自閉症と知的障害は併存するものであると考えられたわけです。そして、このように明らかに知的障害を伴うような自閉症のことを「カナータイプ」「カナー型自閉症」などと呼ぶことがあります。このような自閉症は、自閉症全体の8割を占め、知的障害を伴わない2割を「高機能自閉症」と呼んで、前者と区別してきました。
このような「高機能自閉症」の場合、知的障害がないわけだから、社会適応力にも問題ないと受け取られるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、その特性の現れ方においては個人差があります。
《参考文献》
・『親子で乗り越える思春期の発達障害』(河出書房新社:塩川宏郷監修)
・『発達障害のある子どもができることを伸ばす!』(日東書房:杉山登志郎監修)
発達障害における問題の核心は社会適応力
知能指数が120とか130に達しているような児童・生徒の場合でも、非常にこだわりが強く、頑固で融通が利かないため、学校生活や友人間での対人トラブルが絶えないということがあります。
また言葉は正確に理解し、知能指数も高いはずなのに、他者に共感することが苦手で、学校やクラスでの人間関係にうまく馴染むことができず、浮いた存在になってしまう児童・生徒もいます。
このように、学校生活・友人関係などにうまく適応できない場合には、その生徒本人の生きづらさは日増しに強まるばかりで、結果的に学校に行くのが嫌になったり、教室に入るのが耐え難い苦痛を伴ったりするようになったとしても、何ら不思議はありません。
知的能力の程度が高ければ、発達障害の程度が軽いということにはならないということなのです。
《参考文献》
・『改訂2版 小児科臨床ピクシス 発達障害の理解と対応』(中山書店:五十嵐隆総編集・平岩幹男専門監修)
・『子どもの心の診療シリーズ2 発達障害とその周辺の問題』(中山書店:宮本信也/田中康雄責任編集)
・『発達障害 キーワード&キーポイント』(金子書房:市川宏伸監修)
発達障害と思春期の孤立について
発達障害の場合、幼児期から小学低学年ぐらいにかけては、自分が仲間もグループも作らずに孤立して行動していたとしても、それに対する自覚はあまりありません。
しかし小学高学年から中学にかけての時期には、仲間にも入らずグループも作らずに行動している生徒は、クラスの中でも浮いた存在であることが際立ってきます。クラスの中で違和感をもたらす存在として、同級生たちからの侮蔑の対象になったり、場合によっては集団・グループから排除され、いじめの対象になってしまうこともあります。
思春期は、同年代のグループでの仲間意識が強くなり始める時期であり、発達心理学的には「ギャング・エイジ」と呼ばれる時期に当たります。「ギャング・エイジ」の時期には、教師・親など大人から干渉されることのない、同年代の者たちだけの集団・グループを形成し始めます。この「ギャング・エイジ」の時期こそが、大人になっていくためのソーシャルスキルの獲得へと直結していくものと考えられています。
そして、この思春期における「ギャング・エイジ」の時期に、発達障害の生徒の社会適応力の問題点が次第に顕在化していくものと考えられます。
次回以降のブログでは、視点を少し変えて、思春期における自我の確立と自己否定感情の問題を中心に、発達障害の生徒の抱える悩み・苦しみ・疎外感について、さらに述べていきたいと思います。
《参考文献》
・『よくわかる思春期の発達障害』(ナツメ社:中山和彦/小野和哉著)
・『最新 子どもの発達障害事典 DSM-5対応』(合同出版:原仁責任編集)
◆不登校・ひきこもりと発達障害①~⑩〔不登校支援ブログ一覧〕
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