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不登校
2016/03/12

不登校・ひきこもりと不安障害について③〔予期不安と社交不安〕

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不登校支援ブログ

不登校・ひきこもりの背景にある「不安」について

不登校・ひきこもりの背景にあるとされるものでは、適応障害、不安障害(分離不安障害を含む)、身体表現性障害(起立性調節障害を含む)、そして選択緘黙(場面緘黙)などのその他の障害が代表的なものであるとされています。

これらのうち、「不安」を主症状とする不安障害では、全般性不安障害、社会(社交)不安障害分離不安障害が代表的なものだとされています。

今回のブログでは、これら3種類の不安障害と、それぞれの「不安」の現れ方について検討してみたいと思います。

【参考文献】

・『子どもの心の診療シリーズ 子どもの心の処方箋ガイド』(齊藤万比古 総編集,中山書店)

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不登校に伴う「不安」について

不登校中の生徒が感じる不安については、上記の不安障害に含まれる各障害の主症状との関連から、下記のように分類することができます。

分離不安

②予期不安

社交不安

①の分離不安については、前回ブログでも触れたように小学1年生をはじめとする年少者の不登校においては発現要因となっていることが多いとされます。

しかし、小学高学年や中学生という思春期の不登校においても、その経過中に進行する心理的退行に伴い、二次的ではありますが現れることがあります。

【参考文献】

・『子どもの心の診療シリーズ1 子どもの心の診療入門』(齊藤万比古 総編集・責任編集,中山書店)

・『不安障害の子どもたち』(近藤直司 編著,合同出版)

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不登校生に見られる予期不安と社交不安

私たちの塾(にしおぎ学院)では中学生以上の不登校生を対象にした学習支援を行っていますが、かつては母親と一緒でなければ第三者、他人と会うことができない、あるいは難しいという児童生徒はほとんどいませんでした。

しかし近年、当塾を訪れる中学生の不登校のケースにおいては、分離不安障害における母親との強い分離不安を主症状とするようなケースに、年1組程度は出くわすようになっています。具体的には、「悩みごとは母親にしか相談しない」「話し相手は母親しかいない(友達はいない)」「塾の個別指導は母親同伴でなければ受講できない」などです。

ただ全体的に見れば、中学生におけるこのような分離不安は今のところごく少数であるといえるでしょう。高校生以上でこのような事例は今のところ経験したことはありません。

思春期以降に現れ、生徒たちを苦しめる「不安」で特に問題となるのは、やはり②の予期不安、そして③の社交不安の2つの「不安」であると言えますし、当塾を訪れる不登校生の多くにもこうした予期不安や社交不安は見られます。

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全般性不安障害における予期不安

思春期以降の不登校においては、予期不安や社交不安が前景化しやすいと言われており、特にわが国の不登校を検討していく上においてこれらの「不安」を避けては通れないと言われています。

一般的には予期不安は、全般性不安障害の主症状であり、「未来に起こり得る出来事を予測した際に出現する強度の不安」のことです。

不登校に当てはめて言えば、学校で授業中に指名されて答えられない、教師に叱責されるのではないか、同級生に馬鹿にされるのではないか、あるいはテストの成績が下がるのではないか、部活の試合で大きな失敗をするのではないか、自分のせいで負けるのではないか、という予期不安が典型的なものではないでしょうか。

こうした予期不安において特徴的なのは、「取り返しのつかないミスをしてしまう」「そのミスのために面目丸つぶれで大恥をかく」などのような、過度に否定的な予測に伴う強度の不安であるということです。

【参考文献】

・『子どもの心の診療シリーズ4 子どもの不安障害と抑うつ』(松本英夫/傳田健三 責任編集,中山書店)

・『くらしの中の心理臨床 不安』(青木紀久代/野村俊明 編,福村出版)

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「自意識過剰」と承認欲求

予期不安は、失敗して恥をかくという事態を予測することから生じる不安ですが、こうした不安は、他者からの評価、眼差しを過度に意識するために起こるもので、承認欲求の現れであると言えます。

そして裏返せば、承認欲求は過度の自意識から生じているとも言えるわけで、他者(この場合、学校の同級生)のちょっとした仕草や視線にまで、自己評価を感じ取ってしまうほどに過剰な自意識が働いているのです。

この過剰反応は、エスカレートしていくと学校や仲間内でのささやかな失態や失敗ですら許容できない状態にすら発展し、やがて教室に入れない、学校に行けない、外にも出られない、近所の人にも会いたくない、という状態にまでなるのです。

思春期特有の自意識過剰な状態は、俗に「中2病」とも呼ばれるものですが、この中2という年代は男女問わず、不登校・ひきこもりが急激に増え始める年代にほぼ一致していると言えます。

【参考文献】

・『臨床児童青年精神医学ハンドブック』(本城秀次/野邑健二/岡田俊 編,西村書店)

・『思春期学』(長谷川寿一 監修,東京大学出版会)

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幼少時における万能感と自己愛

様々な環境的な要因により、幼少時に万能感を持った自己像を持たざるを得なかった児童は、必然的に自己愛の強い状態で成長することになると考えられます。

こうした万能感を捨てきれないままに自己愛を強めて思春期を迎えた場合、強い自己愛と思春期特有の心性とが共振してしまい、万能感の亢進とともにミスに伴う恥への過敏性と脆弱性を著しく亢進させてしまうことになります。

「中2病」と言われる自意識過剰な精神状態は、精神的な自立に向けて発達していく途上においては、多かれ少なかれ、たいていの生徒に見られることでしょうし、それ自体が文字通り病的なことではありません。

問題となってくるのは、その生徒が幼少時から学童期にかけて、どれだけ強い万能感を抱き、高い自己愛性を育んできたかによって、予期不安が生じ亢進されているかという点にあります。

もともと自己愛性が高いと、周囲から見ればささやかなミスとしか思われないような失態であっても、恥をかくことへの恐怖を切り抜けることができなくなり、結果的に不登校の契機となり得てしまうのです。

【参考文献】

・『子どもと家族の認知行動療法2 不安障害』(P.スタラード 著、下山晴彦 監訳,誠信書房)

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社交不安と予期不安の違い

不登校との関連がきわめて深いと言われる社交不安は、過剰な内気さを伴い、討論や授業の際に人前で発現したり発表したりすることをひどく恥ずかしがり、かつ恐怖を感じ、それを極端なまでに回避しようする形で生じてくる不安です。

万能感が強く自己愛性の高い幼少時を過ごした生徒に生じやすいとされる予期不安の場合、環境に対する過剰適応のあまり、他者(教師や同級生)に自らの弱みや欠点を見せることを極度に嫌うことが要因の一つであると考えられます。 予期不安が生じやすい生徒は、したがって非常に強がりな生徒だとも言えます。

一方で、社交不安が生じやすい生徒の場合は、消極的かつ内気な生徒が多く、人前で何かをしなければならないという状況に恐怖感を覚えがちです。社会不安の現れ方が顕著な生徒は、日常の学校生活の中では周囲の迫力に圧倒され、緊張の強い萎縮した心性が肥大化していくことになります。

下記の事例のように、社会不安が増大した状態の生徒に、何か別のストレスが新たに加わったとき、その不安はピークに達してしまい、学校生活の続行自体が難しくなることがあります。

【参考文献】

・『社会不安障害のすべてがわかる本』(貝谷久宣 監修,講談社)

・『社交不安症がよくわかる本』(貝谷久宣 監修,講談社)

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中学校生活の中で肥大化する「不安」

【事例:中2男子】公立小学校から公立中学に入学後、中学生活になかなか適応できず悩んでいた。もともと内気な生徒であったが、中学での新しい人間関係、とくに部活動での人間関係になかなか馴染めずに悩んでいた。

練習をする際に、自分がぎこちない変な動きをして同級生や先輩に見られていないかが気になり始め、練習中も萎縮し始める。こうした中、部活の顧問の教師は自らの担任でもあったことから、自分ことをやさしく見守ってくれ、しばしば励ましの声も掛けてくれていた。しかしその年度の終わりごろになって、その教師は体調不良を理由に休職した。

かわりに、他の部活の顧問だった教師がその生徒の部活の顧問を兼任することになったのだが、指導方針が前の顧問とは異なり、それに合わせることが非常に大きな精神的な負担になった。まもなく不安がピークに達し、部活動のみならず授業にすら出られなくなってしまう。

この生徒の場合、中学入学当初から社交不安が亢進し始めており、とくに部活動に参加する中でその不安を増大させていきます。そして、自分にやさしく接してくれていた顧問(クラス担任でもある)の突然の交代により、一気に我慢の限界を超えるほどに不安がピークに達してしまいます。

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社会(社交)不安障害から不登校・ひきこもりに

社会(社交)不安障害〔SAD〕の発症年齢は10代半ば(中学1年~高校1年)とされており、不登校・ひきこもりに陥る要因として非常に注意が重要です。SADが悪化した場合には、社会的ひきこもりに発展する危険性もあり、対人交流が著しく制限されることになります。

中学1年~高校1年ぐらいの時期に発症しやすいわけですが、この時期にひきこもっていまうと達成されるべき様々な発達課題が達成されないことになり、後の学校生活や社会生活に復学・復帰後も大きな支障を来たすことになりかねません。

次回のブログでは、引き続きこの社会(社交)不安障害〔SAD〕と不登校・ひきこもりの問題について検討をしていきたいと思います。

【参考文献】

・『森田療法で読む 社会不安障害とひきこもり』(北西憲二/中村敬 編,白揚社)

◆【にしおぎ学院:不登校支援ブログ】不登校・ひきこもりと不安障害について①~⑦

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